丹下幸平@窃盗犯108号
 
みなーみBlog
 



2005年4月29日を表示

百万円のツボ 其の8

世田谷の、ひたすら長く続く塀の豪邸の庭
坪内昭三は自慢の盆栽に囲まれて、新聞を読みながらニコニコしていた

坪内昭三(82)
戦後すぐ、復員した昭三は闇市で屑鉄業を成功させた後
セメントの製造卸で土木関係の業界では伝説的な人物の一人となった

かつては、時にその政治的な力を多いに発揮することもあったが
10年前、経営から退いた後は、毎週火曜に夜の街に出る以外は
「世田谷のご隠居」としてノンビリと余生を楽しむ悠々自適な生活を続けていた


いまからでも火曜に出かける店の設定を「歌舞伎町」から「銀座」に変更したいのは
ヤマヤマだが、読者諸君には「歌舞伎町にも色々有るしね(はーと)」
と大らかな気持ちで構えていただきたい




「相変らず小さい奴じゃのう、どーせこりゃ架空の物語なんじゃし
架空の歌舞伎町と言う事で納得させる物語を展開させるか『ガンジガラメ』に近い
倶楽部の存在を読者に提供すればいーんじゃないのかね

それとも、こそーっと今から設定変更しても、まぁ誰も気にせんのでは無いかねホッホッホッ」


そもそもそうは、行かないのである
『何故、忍者丸が夜の街の風俗店から集められた売り上げの万札の記番号を知りえたのか』
と言う疑問の答えが、爺、お前だからだ、この設定が銀座じゃそもそも今ひとつ
しっくり来ないだろうが


「なるほどのう、きしくもワシが通う『倶楽部ガンジガラメ』の名前は、
お主の気持ちを反映してしまっていたというわけか、次回はある程度、大筋の仕掛けを
組み立てた後、執筆にあたるようにすることじゃカッカッカッ」


お言葉ありがたく頂戴しておきますハイ






「ご隠居、いったい誰と、お話されておられるのですか?」

「イヤイヤ角田警部、この年になるとなぁ、どうも電波に敏感になっていかん、カッカッカッ
しかしこの108号と言う盗人も面白い奴じゃなぁ、ネットの掲示板とか言う奴で
この程度の噂を立てられたぐらいで何をムキになっておるんじゃろう」

おどけた調子で老人は角田警部の目の前にその日の
新聞の一面を広げて見せた

「108号、セメント業界の重鎮、坪内昭三氏の誘拐を予告」


「動機に関しては我々にも何とも言えませんが、少なくとも匿名で送られた、108号を名乗る人物の
誘拐予告に同封された万札の記番号は『忍者丸』の公開した物と一致しておりました
これを公開した人物は書き込みの手順から重要参考人の本物の忍者丸である可能性は高いと思われます

何度も言いますが・・・

で す か ら 今 夜 『 ガ ン ジ ガ ラ メ 』 に 行 か れ る の は、
偽 者 の 警 察 O B と 言 う こ と で 、 ご 納 得 下 さ い 


「いやぁ、この盗人もワシの顔ぐらいは知った上での行動じゃろう、わしゃぁ行くよ、
稀代の大泥棒「108号」の捕り物に協力すると言うとるんじゃから文句言う筋合いはなかろう」

「ですが・・・ご隠居」

「文句は言わせんワシとて、合気道初段の心得有り、この程度の盗人に遅れはとらん・・・




それに第一・・・・・」



「なんですか?」

老人は角田警部を子供のような目で見るとこう言った


「こんな面白い事、自分以外の人間にやらせてたまるかカッカッカッ

いや実際、盆栽弄りにも少々飽きたのでなホッホッホッ!」






続く→http://mkbag.btblog.jp/cm/kulSc02XQ45466909/1/



4月29日(金)09:27 | トラックバック(0) | コメント(0) | 丹下幸平 百万円のツボ | 管理


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