丹下幸平@窃盗犯108号
 
みなーみBlog
 



2005年5月17日を表示

百万円のツボ 其の18

丹下は「忍者丸」こと坪内忍の予想どうりダストシュートを登っていた
とりあえず、例によって全身タイツランドウォリアの格好に着替えての登頂である
ゴミが二回ほど捨てられたがナントかカントカ登って行った
途中、ヒョコヒョコ、フロアに出ながら登っていく、垣間見る日本勝ち組トップの城は
チンケな犯罪人の知っている世界とは全く異なる世界だった、天井が高い。

日本の勝ち組トップの出すゴミに紛れて、最底辺の盗人がその城に蝿みたいに、よじ登ってるってのは
何とも皮肉なもんだ・・・

そんな事を考えながら、九十九里のナビで、32階までたどり着いた
33階はワンフロア丸ごと忍者丸の物のようで探してみたがダストシュートが一旦途切れている
見つけた入り口を登ってみても34階に出てしまった、さてどうしたものか・・・



島木と由香の前で、忍者丸の正体を明かした老人は熱くなった目頭を
抑えると、気を取り直し話を続けた

「脊髄性筋萎縮症と言う難病を知っておるかね」

「あぁ不治の病と言われるあれですな、少しずつ体が動かなくなっていくと言う」

「そうそして、最後は呼吸すら機械に頼ることになるあれじゃ
・・・・ワシの末の孫は、その病にかかってしまった二年前のことじゃ」

「・・・・・なんと言ってよいか・・・」

「いや、気にする必用は無い、とにかく聞いて欲しい、あんたらのような人に・・・
あれはな、ワシの自慢の孫じゃった。ワシは妾、それから世話した孤児まで血縁と考えるなら
50人近い孫、曾孫まで合わせれば100人以上の子孫がおる
その中には優秀な奴も沢山おるが、あの子は特別じゃった」

「カストリの味が解ったお孫さんですからな」

「それもそうじゃ、ただわしが言いたいのは、元から金持ちの家と言うのはな、
一概には言えんじゃろうが、それを当たり前と思う傾向があるのかもしれん・・・
いや頭では、さっき言った『人の頭を踏む』話だって理解できる
ただそれを本当の意味で『感じる』事が出来るという事は全く別な事なのじゃよ
ある意味そんな感覚は商売人には不要な物よ・・・だからワシの血縁で優秀なのは『とても優秀』じゃ

だがあの子には何故かわしと同じそれがあった

この年になって、自分を囲む血縁が自分の持っておるそんな甘さを
ほとんど共有出来ないと言う事実は、とても寂しい事なんじゃ・・・・

それも、あの子の病が露見した時・・・80になって初めて知った感覚じゃった・・・」

抑えられなくなった涙をこぼしながら老人は、話続けた



5月17日(火)15:07 | トラックバック(0) | コメント(0) | 丹下幸平 百万円のツボ | 管理


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