丹下幸平@窃盗犯108号
 
みなーみBlog
 



2005年5月18日を表示

百万円のツボ 其の19

六本木Wills33階、丹下は「忍者丸こと坪内忍」のだだっ広い部屋の中にいた

「おれぁ悪いがそういう、なんつーのかなぁ哲学みたいな事は良く解らん
でもまぁお前はどうやら死んじゃいねぇと思うぞ」

ベッドの上の忍はそう言われて、動かない表情筋を動かして必死に笑顔を作った

「ありがとう、しかし実質は、オヌシの言ったとうりでござる、拙者は生きた死人
それを謙虚に認めないとある意味、拙者のような人間は始まらないのでござるよ・・・」

丹下は何を言っていいか解らず、頭をボリボリかいてしばらく考えたが疲労でいきなり
何かがプチンと切れた

「アホクサ」

「へっ?」

「知るかそんな話、どーでもいいよ!俺の知ったこっちゃねぇ、いいか?お前はIT企業の
元取締役そいでもって極めて解りやすい『勝ち組』で俺はお前とカワンネェ年だが盗人
の落ちコボレ、わっかりやすーーい『負け組』なんだよ!」

「いや、しかし人生に勝ち負けなんぞ存在せんでござる拙者のこの状況と代わりたいと思うで
ござるか?オヌシ??あぁ!

「何、言ってやがる!代われるモンなら代わりテーよ!お前なんだかんだ
いっちゃあぁいるが何にも困っちゃいねぇじゃねーか!そんなモン贅沢だよ贅沢!」

「ムキーーひどいでござる!拙者は拙者なりに!苦労して!
ここまで来たのでござるよ!それに関してオヌシにどうこう言われる筋合いは無いでござる!」

丹下は、忍を睨みつける、忍も負けていない目を合わせて続けた

「ガッカリでござる!拙者オヌシのファンだったでござるよ!盗みは働くけど人は誰も傷つけない!
今回のクレーンの仕掛けもアッパレでござった!こいつぁいい奴だ人間を大切にする
正にアッパレなる快盗と思っていたでござるのにーーーー!」

「買いかぶりだそんなモン偶然だ偶然、いいかバカ野朗、てめぇの病気はてめぇだけのもんじゃねぇ!
お前と同じ境遇の人間は、山ほど・・・・山じゃぁねぇかもしれねぇがいるこたいるんだよ!
その中じゃぁどう考えたってお前は一番いい状況じゃねーか!それをなんだぁ?
魂のデジタル化?死んでる事を認識できネェだと?甘えた事イッテンじゃネェ!」

「おーおーおー説教でござるか?あぁ?説教?」

「おうとも説教よ!こちとら疲れてんだ、チンタラ金持ちの泣き言聞いてる余裕はネェ!
と言うわけでだな、おれぁとっとと帰ってビール飲んで寝たいんだよ!だから肝心の商売の話を
させてもらおう、てめぇにコレを買わせる、迷惑料含めて1000万!払えこの野朗!」

そう言うと丹下は懐から巻紙を取り出し、忍の目の前のディスプレイに叩き付けた

『108号、見参』

そう、日付といっしょに、その紙には書いてあった

「はぁぁぁぁあぁ?こんなミミズがノタクッタ字を突きつけられて1000万だぁ!納得出来ないでござる!」

「うるせい!てめえのせいで裏の稼業ストップしてたせいでサラ金のローンの支払いが

今 ! 現 在 ! も う 尻 に 火 が つ い て る 状 態 な ん だ よ !

おとなしく払いやがれ!」

「500万」

「いーや負けて、900万」

「・・・・700万」

「うーーーーーくそ!この野朗、800万」

「・・・・それで手を打つでござる」

「よし!明日振り込めるか?」

「口座が解れば今、手続きするでござる」

「よし、そうしてくれ!振込み口座はジャパンウェブ銀行本店、普通口座で番号は8818810タンゲコウヘイだ!」

「ヤバイヤバイマルでござるね・・・大変でござるなぁ手数料は引かせてもらうでござるよ・・・
コラ!暗証番号を覗こうとするんじゃない!クソ盗人!」

明らかに呆れた眼をして忍は手続きを終えたホッとする丹下

「庶民なんて大なり小なりこんなもんだ、ほいじゃぁな縁があったらまた会おう」

「まったく・・・・呆れた『快盗』でござる、早くかえってくれでござる」

「イメージ壊して悪かったな、まいどありぃ」

そういうと、また音も無く現れた葉山に案内されて丹下は忍に手を振りながら去って行った

忍のディスプレイのコメント欄に文字が並んでいた

「(笑(笑(笑(笑(笑(笑(笑(笑(笑(笑(笑(笑(笑(笑(笑(笑」



続く→http://mkbag.btblog.jp/cm/kulSc02R045466A80/1/



5月18日(水)17:25 | トラックバック(0) | コメント(0) | 丹下幸平 百万円のツボ | 管理


(1/1ページ)