丹下幸平@窃盗犯108号
 
みなーみBlog
 



2005年5月2日を表示

百万円のツボ 其の10

歌舞伎町にオカシな夜が来た

とある雑居ビルを大勢のサスマタを持った警官が囲んでいる
そのビルに向かい「坪内昭三」の看板を掲げたライトバンがやって来た



坪内は20年前、所沢市長選に出馬、ちょっと派手に実弾を使い過ぎて
選挙法違反で、とっ捕まった過去があった



坪内は、車上に角田警部と登ると大勢の野次馬に向かって、上機嫌に演説を打ち始めた

「歌舞伎町の皆様!坪内昭三、本日、
怪盗108号の捕縛に協力するべくやって参りました!」


野次馬達は、口笛やら鳴り物やらで大騒ぎである、これまた満面の笑みで手を振る坪内

「わたくし!齢、82歳の爺ではございますが!
老骨に鞭打ち、必ずや悪漢108号を捕縛いたします!
皆様、応援をよろしくお願いいたします!坪内昭三!本日は命がけでございます!」


鳴り物に混じってジジイコールが始まった、いつも狂った街だが今日は異常だ

角田警部の制止にも関らず、爺が意味無く金をばら撒き出したりする物だから
もうシッチャカメッチャカである

「ジージーイ!ジージイ!」



「なんだか訳わかんなくなってきたっす」

少し離れたビルの屋上から、九十九里が双眼鏡を覗きながら呆れて言った
ランドウォリアを着ながら丹下は、その風景を肉眼で確認した

「実に好都合、大騒ぎに、なりゃぁ成るほどいい」



大騒ぎの中、サスマタを持った警官に道を作らせ野次馬に手を振りながら
坪内は「ガンジガラメ」入っていった

「ツボ様、今日は何だか大変な事になっちゃったわねぇ」

「いやいや!良い余興じゃ、今日は派手に遊ぶぞ!今日のワシは百万円のツボ、改め
1千万のツボじゃぁ!それええええええ!カーッカッカ!」

札びらを惜しげもなくバラマク坪内、隣で角田警部が頭を抱えていた



いかん、どうでもイイがこの爺、暴走し過ぎだ



「うはははははははははははははは!ちーーーーさい!ちいさい!」



貸切状態の天井の低い店内の真ん中に座る坪内

「あぁママ今日は、もうどうでも、いいから高い酒からメニュー全部、
持ってきなさい、なけりゃドンドン買って来なさいカッカッ!」

「警察の方にも?」

「いや、言うまでもありませんが我々は職務中ですから、ウーロン茶で結構です」

「角田くん!まぁフルーツとかはイイだろう!まぁドンドン食べたまえ若いんじゃから!」

「はぁ・・・」

「ハイハイ解りました、また今度、仕事以外の時によろしくお願いしますわね」

「あぁこりゃどうも、申し訳ありません」

歌舞伎町の二流の店で1千万近い万札が飛び交うのも訳が解らんが、そんな店を
制服警官が陣取っている中、交わされる日本的名詞交換と言うのは実にシュールな光景だった


そんなバカな宴が2時間も続いた、しかし何も変化は無かった

坪内もサスがに飽きて欠伸をし始める、警官達も本格的にバカバカしくなってきた


俺 達 は 、 い っ た い 何 を や っ て い る の だ ? ? ?


そんな今更の疑問がリフレインしはじめた頃、坪内が立ち上がった



「便所行ってくる」

「あぁ私も行きます」

角田も立ち上がった

トイレから二人が出てくると目隠しとの境の少し死角になった所に

紫の蝶の仮面をしたホステスが立っている

ホステスは老人に、ニコヤカに手を振ると

「ツボチャマ会いたかったわー」

「おーそうかねそうかね!誰か知らんが乳がデカイネェチャンは大好きじゃ来なさい来なさい!」

酔った爺様は、何の警戒も無く、そんなアカラサマに怪しい女に抱きついた


「君!顔を見せたまえ!名はなんと言う!」

「オネェちゃんなんかモップくさいんじゃが?」


「そりゃそうよ!ついさっきまで、掃除用具入れに隠れてたんだもの!ホ-ホッホ!」


「なに!オヌシ、曲者か!」


「曲者だぁ!出会え出会え!」



角田警部も、ちょっと飲んでるようだ


ボン!と言う破裂音と共に、煙が充満した!

「角田くん!うひゃぁーーー!」

「ご隠居ぉぉぉぉぉ!」

慌てる警官達、だが、ガンジガラメの店内は狭かった!将棋倒しになって
身動きが取れない、どうも飲んでる奴が何人かいるようだ!



ドンと言う二回目の破裂音と共に、一気に煙が引き、見えた光景に、角田は唖然とした

雑居ビルの薄い壁面に大穴が開いていた

老人も女もいない!



その頃、ガンジガラメの外ではテレビ局の取材班が待機していた、変化がないので
どいつもコイツも欠伸をしていた所で聞えた、その破裂音に
一斉に目を向けると目の前の雑居ビルに穴が開き煙が上がっている

慌てて各社一斉にカメラを回し始めた



「ご隠居ぉぉぉぉぉ!」

開いた穴から、大声を出す角田が、全国のお茶の間に!


「角さぁああああああん!」

老人の叫び声が帰って来た、その方向を見ると黒装束の男が野次馬の向こうで老人を背負っている


「ひゃひゃ108号だ!追え何としても捕まえりょ!」


やはり、ちょっと飲んでいるようだ





続く→http://mkbag.btblog.jp/cm/kulSc02kb45466938/1/



5月2日(月)00:31 | トラックバック(0) | コメント(0) | 丹下幸平 百万円のツボ | 管理


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