丹下幸平@窃盗犯108号
 
みなーみBlog
 



2005年5月25日を表示

坪内昭三1947 其の6

ソルミは朝、橋本が起きた頃にはいなくなっていた

橋本は、ソルミの行き先が気になって一日探したが
いなくなった物は、しょうがないと諦めた


それから一週間が過ぎ、橋本も大分
仲間ともコミュニケーションが取れるようになってきた有る日の事

この日は大雨で仕事は
屋内での電線の皮むき作業に集中これは、これで
重労働だが皆は何となくホッとしていた

昼飯休憩をしていた時、親方の坪内が帰ってきた

「橋本っさん、仕事取って来たぜぇ」

坪内は商売人面丸出しの笑顔でそう言うと、真ッサラの木箱に
何着か女物の服を詰め込んで来たのを橋本に見せた

「丈直しやら、なんやら色々じゃ、酒場の女に何人か話を聞いたら
案外、需要があったよ一週間で頼む、値段は後で書き込んでくれ
儲かるようならミシンも用意する、糸やら何やらも、思いつくもんは買ってきた
必用なモンがあったら、また言ってくれ」

呆れた事に、もう伝票まで用意して付けてある、こいつぁ心底、商売人だ
『使えるもんは何でも使う』か・・・

「お前、だけど、こっちの仕事はどうするんだよ」

呆れて、山積みされた電線を指差しながら橋本は言った

「バカダネェ、残業だよ残業ちゃんとこの儲けは折半するから五時以降はこっちの仕事をやってくれ」

「折半!手に職のある奴はやっぱ、えぇなぁ・・・」

数字に強い山崎が羨ましがった

「なんなら、教えてやろうか?」

そう言って茶化してやると、山崎は手を振って恐縮しながら言った

「いや、遠慮しとく、余計な事言って悪かった、どっちにしても坪内商会が儲かる訳やし」

「俺の修理工の腕も早く生かしてくれよ、坪内」

平田がそう言うと、坪内がニヤリと笑った

「そいつも、そろそろ目処が付きそうじゃ、倒産しかけの修理工場が安く手に入るかもしれん」

「うわー!そいつぁありがてぇ!頼むぜ!」

平田が小躍りした
大した奴だ、こき使いながら、こうして信用を掴んでいく、こいつは先日のソルミの件にせよ
今日の仕事にせよ、迷いが無い山崎の言い方からして金も商売人なりに綺麗にやっているようだ。
橋本は皮肉でも何でもなく感心した

そんなわけで、今日は縫い物をする事になった、家に帰り汚れた腕全体をゴシゴシ
タワシを使って洗い、似合わない割烹着を着ると橋本は伝票を見ながら仕事にかかった

何枚かある伝票を確認していると、一枚やっかいな物があった

「おい、坪内こんなモンまで取ってきたのか?」

「デカイ物、小さくするなら、どうにかなるじゃろ」

「にしたってだなぁ、こいつの場合は体全体じゃねーか、本人にあって仮縫いしなきゃなんねぇ」

「そういうもんかぁ、じゃぁ本人に会うまでさ、女房迎えにまた行かなきゃならんしな」

まぁ答えは解っていたが、それを確認すると橋本は、出来る仕事に取り掛かった



5月25日(水)10:38 | トラックバック(0) | コメント(0) | 坪内昭三1947 | 管理


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