暑い Ⅱ |
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| 「バカ野朗!てめぇ何やってんだ!しっかりケツを右に振れ!」
「ハイ!」
公団住宅の狭い階段の踊り場で、馬鹿デカイ箪笥を振り回しながら茶髪のチンピラが 俺に向って叫んでいた、箪笥のケツを俺はいつものように必死に押した。
大学五年生になって、親からの生活費はストップ、まぁ出なきゃいけない講義は少ないし 何だかんだいっても寮の家賃は払ってくれてる。 つつましく生活すりゃぁ、週4のこのアルバイトでも十分喰っていける。 てなわけで、前から気になってた、とあるガレージの張り紙の 「日給8千円、週2回~5回、運送助手」って奴をやって見ることにした。
張り紙に書いてあった、電話番号に電話して、俺の住んでる寮の最寄り駅から三つ行った所にある 事務所に行くと、いきなり採用。次の日、朝8時、張り紙の貼ってあったガレージに行くと。 一つ年下の安物のサングラスをかけた、チンピラが俺を待っていた。
「おはようございます、よろしく」
「あぁ、まぁ乗れや・・・」
仕事は、量販家具屋の配送の下請けだ、そこそこの価格の箪笥やらテーブルやらを体力を 駆使して、お客の部屋に放り込む。
まぁガテン系の仕事である、それと何より俺が組まされたこのチンピラがキッツイ男で 粘り強く付き合えば、それほど悪い奴でも無いのだが、初めたばかりの学生にメチャメチャな言葉で 毒づく、マイルールの中で働く職人で、助手がシートベルトを締めただけで 「そんなんで仕事が出来るかバカ野朗!」と大声でわめく。 要は理不尽な、野朗なのだ。それほど後は引きずらない性格が良く見えるまでは時間が必要だ と言うか今思えば、イワユル、ちょっとした「ストックホルムシンドローム」になっていたのかもしれない。
そんな奴なもんで、バイトが一ヶ月マトモに続かない。
しかし俺は、もう三ヶ月以上続けていた。 学生っつっても、俺の場合は、働かないと喰えないのである、仕送りしてもらってる奴とは ちょっと事情が違うので我慢出来た、段々感覚が麻痺してきて。 少々の言葉では動じなくなり「これはこれで、悪か無いかな」なんて思ってた所で 「なんか良いバイト無いかなM?」大学八年生の先輩に聞かれて紹介したら、先輩は 週一だったが、一ヶ月で辞めた「いやぁやっぱりキツカッたすか先輩?」とその後聞いたら ものすごく、うらめしそうな顔で黙って睨まれてしまった。俺には、そういうことはしなかったが もしかしたら、殴られたりしたのかもしれない。
どうやら、学生アルバイトとしては、最悪の部類に入るらしい。
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6月13日(月)10:09 | トラックバック(0) | コメント(0) | お題でワンシーン | 管理
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