丹下幸平@窃盗犯108号
 
みなーみBlog
 



2005年6月17日を表示

暑い Ⅲ

木造の信じられないぐらい、ボロイ大学寮、大学のまん前にある
それを、学生達は揶揄して「鳥小屋第二金剛寮」と呼んでいた。

俺の部屋には、扇風機しかない。

冬の隙間風が、今ありゃぁいいのによー。

貧乏学生大集合のこの建物だったが、不断のバイトと代返で稼いだ金で
なんとか、クーラーを購入した奴が何人かいた。
三部屋隣の後輩もそうだ、行って見るか・・・てなわけで行ってみた。

予想通り、すでに部屋の前には何人かのスリッパが並んでいた。
それにしたって、今日は多い。6畳の部屋に7足もありやがる、部屋の中から
マージャンパイをジャラジャラ言わせる音が聞こえてきた。

ノックもせずにドアを開ける、外気よりは、さわやかな風がタバコの煙と共に
流れて来た、いやぁこりゃいいや。

「よーH、俺も仲間に入れてくれ」

Hは、俺と同期のYの後ろで小さくなって座っている

「モー限界っす勘弁して下さい」

「うるせー、お前がそっちの隅にいきゃ良いだろ、ほら開けろ、ホラ!」

「おーM、やるか?そろそろAが抜けるんだ」

「また、弁当、賭けてんのか」

Hの人権など、無視、今日は他のクーラー軍団は、ほとんどいないし、そういう奴の
部屋の鍵は、大概、厳重で、勝手に入りたくても入れないから仕方ない。
後一年、がんばりゃコイツにだって後輩が出来る、だから遠慮なんて
しない、もっとも、クーラーを買うような人間がこの鳥小屋に二年残ったって話は聞かないが

部屋の隅で小さくなりながら、かわいそうなHは猫を撫でていた。

Aがビデオ屋にアルバイトに行って、ハンチャンが終わった頃には俺の
尻にも根がはっていた、タバコの煙が粋な意味では全く無いレベルで眼にしみるが
サウナ状態の俺の部屋にくらべりゃ、よっぽどマシだ

そうおもっていたら、イキナリ停電、オイオイまたかよ・・・

暗い中「またあいつか・・・」とみんながヒソヒソ言ってると、いつもの火の玉がドロドロ出てきた
うちの寮の一番古い先輩だ、青い顔をして先輩が喋りだした。

「こんばんわー」

「先輩なんすか、今日は、勘弁して下さいよ」

「いやぁ、何だか楽しそうだったものでぇ」

気温が、ドンドン上がってくる。この先輩は、10年くらい前、うちの寮で首吊っちゃったんだが
原因が、女にフラレタだけらしく、その上しょっちゅう出てくれるので誰も怖がらなかった。

慣れたもんで、部屋の主が蝋燭を立てる、この人が出てくると電気がストップするので困る
また、ひとしきり話を聞いてやらないといけない、みんなうんざりしていた。

「で、今夜は、どの失恋の話です?」

「いやぁ、今日はお伝えしたい事があって来たのです~」

「はぁ?」

「もうすぐ、この部屋に異変がおこりますぅ」

「はぁっぁああぁ?」

後輩が撫でていた猫が「にゃぁ」と、めんどくさそうに一声鳴くと、先輩はドロドロ
音を立てて消えて行った。


みんな、ほっとして、電力の回復をまった・・・いつもだったら、五分もすりゃぁ、回復するんだが・・・

何かがぴょーんと飛んだ


「ののっ蚤だ!」


だれかが!大声で言った!
「ひぃ!」っと悲鳴を上げて猫を放すH、電気が回復した後、我々がパニックに陥ったのは言うまでも無い
マイクロ吸血鬼が、ぴょんぴょん飛ぶ、うわ!やられた!脇が、脇が野戦病院!うががが!

先輩が電気止めたのをキッカケに活動始めやがった!ちきしょー!今度、祈祷師呼んでやる!

混乱してモタモタしてる間に
蚤空母(猫)なんか飼ってるくせに潔癖症のHが、錯乱して買いだめしてるバルサンに火をつけた。

あぁまぁ確かにクーラー効かせる為に、この部屋、めばりしてるしねぇ・・・ってやめろ!バカ!



蚤虱 こゑたてて鳴く 虫ならば 我が懐は むさしののはら(一茶)


お後がよろしいようで・・・・次も「暑い」で行きます。

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6月17日(金)09:23 | トラックバック(0) | コメント(0) | お題でワンシーン | 管理


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