坪内昭三1947 其の16 |
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| 翌日、徹夜作業で橋本の乗るジープが組みあがった。
「本当は、しばらく、回してもらって もう一回バラシてってやりたいんだがな・・・」
「まぁ贅沢は言えネェさ、言う気も無い」
そう言うと、橋本はセルを回した、一発で始動 アイドリングの調整作業をする。 アイドリングが安定した所で修理工場を出る、工場の周囲は、一面の大根畑だった。 ニュートラルの状態でアクセルを軽く踏み込む。一気にタコメーターが上弦まで跳ね上がった。
「それなりに高回転仕様になったな、俺好みのジャジャ馬だ」
「何だってー!」
「 俺 好 み の ジ ャ ジ ャ 馬 だ ! 」
マフラーから余計な物を排除したので騒音が半端では無かった。 結局、ボアアップしたとは言うものの、僅か5ミリ程度の拡張だ、それもショートストロークに変更 した事により総排気量としては以前とは大差は無い。しかし平田の経験とカンで組み上げられた エンジンは快調に駆動していた。
「後は!キャブレターのメインジェットの微調整だ!」
「何だってー!」
「とにかく走ってこい!」
今回の改造は、実はエンジンだけでは無い、橋本の足元を見るとブレーキペダルが 純正の物の隣に自作の物が並んで合わせて二枚ついていた、左が前輪、右が後輪に分けてある。 これは、橋本が頼んだオリジナル使用だった。
大根畑の間の農道を快調に走る。高回転化した事によりトルクの不足が出ないかと心配したが シリンダーヘッドを、薄く削り圧縮比を若干上げた事により以前よりその点も僅かだが向上していた。 もう少しメインジェトの番数を上げる必要がありそうだが低回転では、それほど問題無し。
まっすぐな、見とうしの効く広い農道に出る。デコボコも余り無い良い感じだ。 一気にアクセルを踏み込むと、以前のオンボロ状態とは比較出来ないレスポンスで 速度が上がった、一旦停止し、前輪駆動を解除した後、再スタート、ミッションを三速に上げ アクセルをベタ踏みする、中々メーターを振り切る所までは行かない。 舗装された道路なら状況はもう少し違ったろうが、昨日の話し合いで 決まったコースは曲がりくねった林道だ、特に問題は無いだろう、しばらく走った後メインジェットの 番数アップで問題無しと判断した橋本は、砂地のポイントを基点に右ブレーキペダルで後輪をロックさせると ドリフトしてユーターンを決めた。こちらの方も旨い具合だ、十分戦える。
工場に戻ると、坪内が手を叩いて出迎えた。
「どうじゃ!橋本さん、平田さんの腕は!大したもんじゃろう!」
「あぁ、たいしたもんだ、このオンボロ車、サラブレッドに改造しちまうんだからな」
「まだ、終わってねーよ、どうだい橋本さん」
「ほとんど問題無い、ただやっぱり高回転に、なったとき、もたつくな、 最高速は重要じゃねぇが、もう少し番数を上げてみよう」
「了解、一時間待ってくれ、あぁそれとな、もう一人、ジャジャ馬が来てるぜ」
平田がそう言うと、坪内と一緒に意味ありげに笑った。
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6月21日(火)01:50 | トラックバック(0) | コメント(0) | 坪内昭三1947 | 管理
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