丹下幸平@窃盗犯108号
 
みなーみBlog
 



2005年6月3日を表示

坪内昭三1947 其の12

坪内の屋敷は全焼してしまっていた。
庭に残された動かないジープ以外は何も原型を留めていない。

村の消防団が現場を、監視していたので事情を聞くと
幸い、家族と仲間達は無事なようだ、村の公民館にいると言うので
いそいで駆けつけると、焼け出され疲れきった家族がいた。
煤まみれの息子が、坪内と橋本に気づくと駆け寄って来た

「みんなは、大丈夫か?」

「佐門さんと眞田さんが、火傷したけど、後の人は幸い無事だよ」

「なにいい!」


年長の息子の指差した先に、包帯だらけの佐門が、お菊の給仕で
子供達と一緒に炊き出しの握り飯をモリモリ喰っていた。

「親かたぁ、わしの事なら心配せんで下さい」

「心配するわい!?」

他の連中を、慌てて確認した、眞田が一番、深い火傷をしていたが
幸い全治一週間といった所だった。

そうは、言っても全員、満身創痍の状態である。

「昨日、親方が出かけてすぐに、襲われたんや」

「何もかも消し炭になっちゃいました。すいません坪内さん」

布団で横になっている、眞田が、すまなそうに、そんな事を言った。

「アホ、全員無事・・・では無いが、幸い生きとる、今はそれが肝心よ、寝とれ!」

ヤクザ共が総員を繰り出して、寝込みを襲ってきた時タマタマ、屋敷の外の便所に
行っていた佐門が気づいた、人数は20人以上いた、気づいた時には手遅れで火炎瓶が
何本も投げ込まれ、木造の坪内のボロ屋敷は、あっというまに燃えてしまった
慌てて佐門が、全員を救い出したが、眞田を助ける時に落ちてきた梁が背中にぶつかり
大火傷を、おってしまったのである。

それと今、ここには、居ないが、李の方も同様な襲撃にあったらしい、やつら、とことんやる気のようだ。
向こうでは、重症の人間も何人か出たようだ。

「万事休す、畳の下の金もこのとうりだよ坪内」

平田が口惜しそうに、消し炭になった札が入った箱を見せた時。
公民館の玄関に、子分を引き連れ橋本に片目を潰されたヤクザが
嫌な笑いを浮かべて、のこのこ現れた。

「見舞いにきたぜ、坪内、調子はどうだ?」

「てめぇ!ふざけんな!」

橋本が飛び掛ろうとするのを、坪内が制止した

「やめとけ!橋本っさん」

「こんな奴、相手にしては、いけまもはん!橋本どん!」

包帯だらけの佐門が橋本を、押さえ込む。
ヤクザを罵りながらバタバタしている橋本の前で
片目のヤクザは可笑しくてたまらないと言う残酷な表情で、にやけた。

「俺は知らない事さ、なぁ坪内、お前は、相当恨み買ってるもんなぁ」

ヤクザがトボケテ言う。
ウェイン少佐の情報を出し抜いた辺りから用意周到なのを考えれば、今回の襲撃も
根回しを十分した上だろう。ここで、こいつを袋にした所でどうにも為らないに違いない。

「まぁ所沢から、出て行くこったな、味方は誰もいねぇぞ坪内、これからお前が何か
しようと、するたんびに火炎瓶が飛んでくるかも知れないぜ、気を付けるこった」

歯軋りする橋本達だったが、その脅しを聞いて、坪内が突然ゲラゲラ笑い出した。

「これで、終わりと思ったら大間違いじゃぞ、わしゃ商売人じゃ。
あんたらとは違うって所、嫌ってほど見せてやるから、よく見とけ、カッカッカッ!」



6月3日(金)12:51 | トラックバック(0) | コメント(0) | 坪内昭三1947 | 管理


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