丹下幸平@窃盗犯108号
 
みなーみBlog
 



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坪内昭三1947 其の21

黄金地帯の陣地の中に、もう迷いは無かった。
橋本を止める人間は誰もいない、ただ皆が緊張しながら彼の行動を見守っていた。

「もっときつく縛ってくれ」

「しかし、これ以上きつくすると血が止まりもす」

「いいから、やってくれ」

平田が、スクラップから切り出した鉄板を曲げた補助具を、佐門が、うっすらと血の滲む
橋本の右手を覆うように縛り付けていた、何とか親指は生きている、他の指は動かない状態だが
これで取り合えずはメインのシフト操作が可能になる。ハンドルもどうにか握れそうだ痛みはするが・・・
橋本は、ジープに乗り込むとシフトの感触を確認した、微妙な操作は正直難しくなったが
それより問題は、メインのシフトの下にあるフロントドライブの操作だ。
ウェイン少佐もフルにシフト操作してくるだろう、林道のレースとは言え四輪駆動で固定する
訳には行かない、走行中の操作は難しい・・・

諦めて、改造の際、取り付けた戦闘機のシートベルトを固定していると。
縄と三枚の座布団を持って、緊張で顔を強張らせた坪内がやって来た。
後ろで坪内の家族が心配そうな顔で見ていた。

「何だよ、まだ止める気じゃねぇだろうな」

「止める気なんざ無いわい!わしゃあんた踏み抜く、ただあんた一人にゃ行かせネェ!佐門!」

佐門が、思わず驚いた。この男が敬称を付けずに自分を呼んだのが始めてだったからだ。

「ワシを助手席に縛り付けてくれ」

「親方、何を考えておられるんじゃ!」

「やめとけ、お前まで怪我させる気はねぇ」

「うるさい!わしゃあんたの雇い主じゃ、いいか?勘違いするなよこのジープの持ち主は誰じゃ?
言う事聞かないんなら降りてもらう」



7月29日(金)22:41 | トラックバック(0) | コメント(0) | 坪内昭三1947 | 管理

坪内昭三1947 其の20

賭場で転がされた橋本に三杯目のバケツの水がかけられた。
途切れ途切れの意識の中、橋本の脳裏に浮かぶのは
以外なほど下らない物だった。
この騒動の直前に受けた縫い物の仕事の事が何故か気になってしょうがない。

「この手じゃ針は持てネェ・・・」

続けて橋本は、シンガーの足踏みミシンを黙々と不機嫌な顔で踏み続ける
親父の背中を思い浮かべた、中等学校で陸軍飛行学校への推薦を受けた時も
母親は右往左往して混乱していたが、親父はいつものとうりだった。

夜なべして、親父はいつも納期を守ってたイライラしながら・・・
蛙の子は蛙って奴か・・・

南方へ出兵して以来、音信不通だがあの親父はどうしているんだろう。
相変らず、休みに借り物の田畑を耕し、今もシンガーを踏み続けているのだろうか?

右手の中指に、片目の金槌が振り下ろされ、ボンヤリしていた意識に雷撃のような痛みが走り
夢のような世界から無理矢理引き戻され絶叫を繰り返すが、何故かそんな自分を遠くから見ている
冷静な意識が同時にいた。

片目は引きつりながら笑い続けていた。
嫌な野朗だが、こういう奴がこれからまかりとおるのか・・・・
まぁ今に始まったことじゃねぇ・・・・・
戦死は免れたが・・・・撃墜されて死ぬのと違うかと言えば大差ねぇのかもしれねぇ・・・・

右手の中指が砕けて、片目はもう一杯バケツの水を掛けさせると。
手足を押えさせる必要の無くなった橋本の襟首を掴みあげた。

「さぁて・・・・もうちょっとで、おめぇも廃業・・・ククク・・・いやもう廃業だな!すまねぇすまねぇ!」

痛みは、もう一線を越えていた、油断すると完全に意識が飛びそうになる。
諦めちまえば、もうそれでいい・・・・だが何かが、そうなりそうな橋本の意識を引き止めた。

俺を楽にしてくれないコイツの正体は一体なんだ???

「橋本、どーする?偉い事になっちまったぜ!右手もう使い物にならねぇぞ!ぜーーーんぶ
てめぇの責任だけどなぁ!いやぁ俺も悲しいぜ人生終わりだなぁ」

そう言いながら笑う片目の顔を見て、橋本に今更おかしな感情が湧いてきた。

「怒り」だ。

そうか・・・こいつの正体は・・・そうか・・・まだ俺は死んじゃいねぇ・・・

橋本は、自分をボロねずみをオモチャにする猫のように弄ぶ片目の面に唾を吐きかけた。

「てめぇ・・・・」

青筋を立てた片目は、橋本を床に叩き伏せると、金槌を中指に叩き付けた。

中指が根元から、外れた。

「水だぁ!寝かすんじゃネェ!さっさと次持って来い!」

「へい!」

あまりの残酷さに震え上がっていた片目の手下が、バケツを持って出て行こうとした
が戸口で突然立ち止まった。

「何やってんだ?さっさと行け!」

「そうは、いかねぇそこまでだ」

意識が飛ぶ寸前に橋本が見たのは、二丁拳銃を構えた高倉と返り血を浴びたドスを
持つカフェのママだった。気おされたチンピラが後ずさりする。
片目が、何が起こったか、把握出来ずにいる所に高倉が、ずかずかと進んだ。

「高倉・・・てめぇ」

橋本の状態を見て、高倉は溜息をついて、いきなり片目の頭に銃を構えた。

「おめぇやりすぎたよ」

そう言うと、あっさり高倉は引き金を引いた。



7月13日(水)01:31 | トラックバック(0) | コメント(1) | 坪内昭三1947 | 管理

坪内昭三1947 其の19

小火騒ぎが収まり、橋本は改めて縄で縛られて
人のいなくなった賭場に転がされていた。
片目が額に青筋を立て引きつった笑顔をつくりながら、
橋本の側に屈むと手に持ったドスの鞘で
橋本の腫れ上がった頬をピシャピシャと叩いた。

「まったく嫌な野朗だねぇ、おとなしくしてりゃぁ明後日の朝にゃ
無罪放免って言ってやってたのによう」

橋本は、改めて殴られたのか口答えも出来ない状態だった。
ウンウンうなるのが精一杯、変形した顔面から
血がしたたり落ちて薄汚い賭場の畳を染めていた

「まぁな、死んでもらうのが一番簡単なんだがね、お前、俺の左目潰してくれたからねぇ
まずは、お礼をしなきゃいけねぇ・・・・」

黒い眼帯をつけた左目を指差すと橋本の髪を掴み上げた
息も絶え絶えの橋本が、振り払おうとするが見張りをしていたウドの大木野朗が橋本を押える。
片目はドスを鞘から抜いた、橋本の腫れ上がった左目に切っ先をつきつける

「やっやっやべど・・・・」

「そうは、行かねぇ。悪いのは、おめえだ」

腫れ上がった瞼の上からドスを突き立てた。
声にならない叫びを腹の底から絞り上げながら橋本は身をよじる。

「さて・・・これでまずは、おあいこだ・・・・次は、どうしてやろうかな・・・」

片目は懐からタバコを取り出すと、舎弟に火をつけさせて、楽しそうに次のリンチの方法を考え始めた。



カフェのママが高倉組のビルの前、クロガネ4起を乗り付けると。
花束持って待っていた組長の高倉が、それを迎えた。

「お嬢さん、お待ちいたしておりやした」

「挨拶は、いいよ、それより出入りだ、覚悟は決まってるだろうね?」

「えぇ?出入り?」

「あんた、それぐらい察しを効かせな!何、呑気に花なんぞ持ってんだよ、
まったく・・・支度違いだよさっさと道具もって横に乗りな!」

「いや、お嬢さん!やめときなせぇ!せっかく先代が、お亡くなりになって堅気になったんだ
つけの取立てだぁなんだで、殴りこみやらかしちゃぁ草葉の陰で親父さんが泣きますぜ!
そんな事ならあっしらが、うまく平和的に・・・いやまぁヤクザ的にまぁどうにかいたしますから」

「ほんっとにあんたはバカダネェ、呆れて物もいえないよ!なんだい!平和的にヤクザ的にってなぁ
腑抜けのどっかの国の憲法じゃ無いんだよ!あたしの大事な妹分とその間夫が柄さらわれちまったんだ!」

「なんですって!!!そいつぁいけねえ!!!」

高倉は、顔色を変え、持っていた花をもったっままモンドリうつように
踵を返し事務所に駆け込むと。しばらくして旧軍の鉄兜を被って襷がけにドスを持ち
持てる限りのピストルを襷と帯に突っ込んで出てきた。

「あんたねぇ、それ売りに行くのかい?二人きりしかいないんだ、どうするんだよ、まったく」

真顔で懐から一丁取り出し、ママに渡すと続けて高倉は言った

「お嬢さん、こいつぁね、こういうもんだ。ドスなんざ、二三人怪我させたら
案外使えなくなるもんです、鉄砲だって弾込める余裕なんてねぇもんだ。
奴ら、高田馬場あたりに最近、賭場開きやがったんだがその辺でトグロまいてんでしょう
こう見えてもね、無茶な殴りこみなら、あっしの専売特許、まかせておくんなせい」



7月7日(木)01:42 | トラックバック(0) | コメント(0) | 坪内昭三1947 | 管理

坪内昭三1947 其の18

次の日の朝、カフェのママが目をさますと。
ソルミは寝床にいなかった。
目を細めて微笑みながら、窓の外を見てみるとクロガネ4起の中にも二人はおらず。
昨日、橋本に貸した毛布がそのままになっていた。

毛布をかたずけようと店を出て車のドアをあけ、毛布を手にすると
血が滲んでいた、おかしな勘繰りをして顔を赤らめるママ

「橋本さん、やさしくしてあげてくれたのかしら?」

よく見ると毛布だけでなくシートのあちらこちらに、どす黒い出血の後がこびり付いている。

ようやく異常に気づくと毛布を置いて店の中に慌てて戻り。
カウンターの電話のハンドルを回し交換手を呼び出した。

「新宿の高倉組につないで、大至急」

しばらくして、組長本人が出てきた

「高倉さん、そっちに今、何人いる?あんただけ!・・・まぁいいわ・・・すぐに行くから支度しな!」

そう言って電話を乱暴に切ると、奥の部屋の押入れの中に隠してあった長いドスを取り出し
刀身を確認した、鈍く光るドスを鞘に戻すと今度はサラシを取り浴衣を脱ぐ。
白い美しい彼女の背中には見事な登竜が彫られていた。

腹から胸にかけて、サラシを、きつく巻く。


歌舞伎町の闇市から少し離れた民家に、賭場が開かれていた。
人相の悪い連中がタバコの煙で煙る部屋で札束を握りながら睨みあっている。
そこに橋本に片目を潰されたヤクザが顔を出した。

「おうっあいつらどうしてる?」

壷を振る若い衆が手を止めると頭を下げて答えた。

「へい、異常ありません、見張りに二人つけてあります」

「そうかい、ちょいと見舞ってやるか」

ニヤニヤしながら奥に入ると中庭にコンクリートの蔵があった。
見張りの二人が礼をする、片目は、背の異様に高い方に指示して鍵を開けさせ
暗い蔵の中を覗いた。

後ろ手に縛られた橋本がウンウンうなっている。
その側で縛られて座っているソルミが片目ヤクザを睨んだ。

「二人っきりでいいところ申し訳ネェなぁ橋本、気分はどうだ?」

「いいわけないじゃない!」

「お嬢ちゃんに聞いちゃいねぇよ、そこに転がってる野朗に聞いてるんだ」

「ふざけんな!」

そういうと、ソルミは唾を吐きかけた。
片目はポケットからハンケチを取り出し唾のついた顔を拭くと面白そうに
這いつくばりながら自分を睨む橋本を見下ろした。

「何、後二日ばかり、ここで寝てくれてりゃいいのさ、おかしな事しやがったら
女と一緒に江戸前の海に沈めて寿司ネタの餌にしてやるからな、じっとしとくこった」

ひきつった笑い声をあげながら片目は、橋本の髪を掴み、立たせると足をかけて引っくり返すと
蔵の隅にあったガラスの壷が棚から転げ落ちて大きな音を立てて割れた。

「橋本さん!」

もう一度嫌な笑い声を上げると、片目は蔵に鍵をかけ直した



7月4日(月)12:08 | トラックバック(0) | コメント(0) | 坪内昭三1947 | 管理


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