丹下幸平@窃盗犯108号
 
みなーみBlog
 



2005年7月29日を表示

坪内昭三1947 其の21

黄金地帯の陣地の中に、もう迷いは無かった。
橋本を止める人間は誰もいない、ただ皆が緊張しながら彼の行動を見守っていた。

「もっときつく縛ってくれ」

「しかし、これ以上きつくすると血が止まりもす」

「いいから、やってくれ」

平田が、スクラップから切り出した鉄板を曲げた補助具を、佐門が、うっすらと血の滲む
橋本の右手を覆うように縛り付けていた、何とか親指は生きている、他の指は動かない状態だが
これで取り合えずはメインのシフト操作が可能になる。ハンドルもどうにか握れそうだ痛みはするが・・・
橋本は、ジープに乗り込むとシフトの感触を確認した、微妙な操作は正直難しくなったが
それより問題は、メインのシフトの下にあるフロントドライブの操作だ。
ウェイン少佐もフルにシフト操作してくるだろう、林道のレースとは言え四輪駆動で固定する
訳には行かない、走行中の操作は難しい・・・

諦めて、改造の際、取り付けた戦闘機のシートベルトを固定していると。
縄と三枚の座布団を持って、緊張で顔を強張らせた坪内がやって来た。
後ろで坪内の家族が心配そうな顔で見ていた。

「何だよ、まだ止める気じゃねぇだろうな」

「止める気なんざ無いわい!わしゃあんた踏み抜く、ただあんた一人にゃ行かせネェ!佐門!」

佐門が、思わず驚いた。この男が敬称を付けずに自分を呼んだのが始めてだったからだ。

「ワシを助手席に縛り付けてくれ」

「親方、何を考えておられるんじゃ!」

「やめとけ、お前まで怪我させる気はねぇ」

「うるさい!わしゃあんたの雇い主じゃ、いいか?勘違いするなよこのジープの持ち主は誰じゃ?
言う事聞かないんなら降りてもらう」



7月29日(金)22:41 | トラックバック(0) | コメント(0) | 坪内昭三1947 | 管理


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