丹下幸平@窃盗犯108号
 
みなーみBlog
 



2005年7月4日を表示

坪内昭三1947 其の18

次の日の朝、カフェのママが目をさますと。
ソルミは寝床にいなかった。
目を細めて微笑みながら、窓の外を見てみるとクロガネ4起の中にも二人はおらず。
昨日、橋本に貸した毛布がそのままになっていた。

毛布をかたずけようと店を出て車のドアをあけ、毛布を手にすると
血が滲んでいた、おかしな勘繰りをして顔を赤らめるママ

「橋本さん、やさしくしてあげてくれたのかしら?」

よく見ると毛布だけでなくシートのあちらこちらに、どす黒い出血の後がこびり付いている。

ようやく異常に気づくと毛布を置いて店の中に慌てて戻り。
カウンターの電話のハンドルを回し交換手を呼び出した。

「新宿の高倉組につないで、大至急」

しばらくして、組長本人が出てきた

「高倉さん、そっちに今、何人いる?あんただけ!・・・まぁいいわ・・・すぐに行くから支度しな!」

そう言って電話を乱暴に切ると、奥の部屋の押入れの中に隠してあった長いドスを取り出し
刀身を確認した、鈍く光るドスを鞘に戻すと今度はサラシを取り浴衣を脱ぐ。
白い美しい彼女の背中には見事な登竜が彫られていた。

腹から胸にかけて、サラシを、きつく巻く。


歌舞伎町の闇市から少し離れた民家に、賭場が開かれていた。
人相の悪い連中がタバコの煙で煙る部屋で札束を握りながら睨みあっている。
そこに橋本に片目を潰されたヤクザが顔を出した。

「おうっあいつらどうしてる?」

壷を振る若い衆が手を止めると頭を下げて答えた。

「へい、異常ありません、見張りに二人つけてあります」

「そうかい、ちょいと見舞ってやるか」

ニヤニヤしながら奥に入ると中庭にコンクリートの蔵があった。
見張りの二人が礼をする、片目は、背の異様に高い方に指示して鍵を開けさせ
暗い蔵の中を覗いた。

後ろ手に縛られた橋本がウンウンうなっている。
その側で縛られて座っているソルミが片目ヤクザを睨んだ。

「二人っきりでいいところ申し訳ネェなぁ橋本、気分はどうだ?」

「いいわけないじゃない!」

「お嬢ちゃんに聞いちゃいねぇよ、そこに転がってる野朗に聞いてるんだ」

「ふざけんな!」

そういうと、ソルミは唾を吐きかけた。
片目はポケットからハンケチを取り出し唾のついた顔を拭くと面白そうに
這いつくばりながら自分を睨む橋本を見下ろした。

「何、後二日ばかり、ここで寝てくれてりゃいいのさ、おかしな事しやがったら
女と一緒に江戸前の海に沈めて寿司ネタの餌にしてやるからな、じっとしとくこった」

ひきつった笑い声をあげながら片目は、橋本の髪を掴み、立たせると足をかけて引っくり返すと
蔵の隅にあったガラスの壷が棚から転げ落ちて大きな音を立てて割れた。

「橋本さん!」

もう一度嫌な笑い声を上げると、片目は蔵に鍵をかけ直した



7月4日(月)12:08 | トラックバック(0) | コメント(0) | 坪内昭三1947 | 管理


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