丹下幸平@窃盗犯108号
 
みなーみBlog
 


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百万円のツボ 其の9

坪内の爺さまが、豪邸でワクワクしている頃
丹下と九十九里は倒産した場末のパチンコ屋の中で
今夜の準備をしていた

丹下は、いつもの全身タイツに今回は不思議な装備を着けている
左腕には小形のキーボード
右目には液晶のディスプレイを内臓したゴーグル

「しっかし、九十九里よぅ、こんなモンよく見つけたなぁ」

「ネットオークションでも手に入らないと思うっすよ、米軍の最新装備ですからね、いやぁ
横浜のドブ板通りでコイツが転がってるのを見た時、感動しちまいましたよ
っていってもあったのはその右目のヘッドアップディスプレイだけだったんですけどね」

丹下の右目のゴーグルの中には、GUI画面が投影されていた
右胸に装着したトラックボールを操作してアイコンをクリックすると
ピンボールゲームがスタートした

「丸っきりソフトはウィンドウズだな、余計なモン入れとくなよ・・・今夜は爺、抱えて走り廻って大騒ぎ
ってな予定な訳だが途中でフリーズなんてこたねぇだろうな」

「さぁねぇどうっすかねぇ、正直、丹下さんのの運次第っすね時間無さすぎでしたから」


丹下が今回装備しているのは、米軍が開発中のランドウォリアーシステムを模倣した
九十九里自家製の『着れるパソコン』だった

「丹下さん今更だけど、その装備10キロ近くあるけど動けます?」

「今それ言ったってしょうがねーよ、携帯電話じゃやりにくいのは、間違いないからな」


とりあえず丹下達の考えはこうだ
今回の敵である忍者丸は、記番号の公表以降はネット上に姿を現していなかった
これでは、せっかく九十九里が人妻から手に入れたIPを手に入れる方法も役に立たない

忍者丸をとにかく、ネット上に引きずり出す必要があった

その公表された記番号だが、公表されたうち、三分の一ぐらいは実はあてずっぽうの
物だった、それもそのはず忍者丸は、丹下が盗みに入った犯行時刻に一番近くに入金しにきた
「ガンジガラメ」の店長が、坪内老人の百万円を入金する事を知っていたのだ

その百万円を続き番号で全て公表したのでは、ネタモトが簡単に割れてしまう
それでブラフと混合して公表したのである

忍者丸は坪内老人を良く知る何者かだ

警察もその観点で老人に事情聴取しているのだが、明確に忍者丸につながる線はまだ出ていない



丹下は覚悟した、ドロボー稼業抜きでは、やっていけない情けない自分を

それをスッキリ続ける為には、このネットストーカーをギャフンと言わせる必用が丹下の中にあった



だから、あえて大騒ぎをする方を選んだ



少なくとも、今回の報道で忍者丸は、少しはあせったはずだ

これで、リアルタイムで大騒ぎの中心人物しか解らないであろう事をネットで実況すればどうなる
間違いなく108号である人物がネット上に現れたとしたら

必ず忍者丸も現れる

当初からネタモトを公表していれば、もっと早く自分が注目されたはずだ
それをしなかったのは、丹下しか知らない筈の情報を知らせる事で接触を望んでいたからに違いない

それも自分の正体は知らせずに

そうは、問屋が卸さない、こちらは、忍者丸の正体を知っているであろう人物を
掴んでいるのである、間違いなく奴は焦る、その点で追い詰めていけば、そこには必ず油断が発生するはずだ


「相手が人間ならっすけどね、でもちょっとカケの要素が多い仕事だなぁ・・・」

「まぁな」

「まず、そのランドウォリアモドキがマトモにフル稼働する時間が長く見て二時間、
それに例のIPぶっこぬきを出来るのが・・・・そうっすねぇ10回アクセスしたらバレルだろうなぁ・・・」

「まぁあの会社も、さすがに俺が誘拐の実況するとは考えてねーだろ臨戦態勢ってわけじゃないだろうさ
思ってるよりゃアクセスできるんじゃねーか」

「そこんところが肝っすね、確かに、こりゃ気が狂ってるっすよ」

「そういう事だ、狂ってるってのが俺たちの武器ってわけさ」

「やな武器っすねぇ嫌いじゃねーけど」






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4月30日(土)01:32 | トラックバック(0) | コメント(0) | 丹下幸平 百万円のツボ | 管理

百万円のツボ 其の8

世田谷の、ひたすら長く続く塀の豪邸の庭
坪内昭三は自慢の盆栽に囲まれて、新聞を読みながらニコニコしていた

坪内昭三(82)
戦後すぐ、復員した昭三は闇市で屑鉄業を成功させた後
セメントの製造卸で土木関係の業界では伝説的な人物の一人となった

かつては、時にその政治的な力を多いに発揮することもあったが
10年前、経営から退いた後は、毎週火曜に夜の街に出る以外は
「世田谷のご隠居」としてノンビリと余生を楽しむ悠々自適な生活を続けていた


いまからでも火曜に出かける店の設定を「歌舞伎町」から「銀座」に変更したいのは
ヤマヤマだが、読者諸君には「歌舞伎町にも色々有るしね(はーと)」
と大らかな気持ちで構えていただきたい




「相変らず小さい奴じゃのう、どーせこりゃ架空の物語なんじゃし
架空の歌舞伎町と言う事で納得させる物語を展開させるか『ガンジガラメ』に近い
倶楽部の存在を読者に提供すればいーんじゃないのかね

それとも、こそーっと今から設定変更しても、まぁ誰も気にせんのでは無いかねホッホッホッ」


そもそもそうは、行かないのである
『何故、忍者丸が夜の街の風俗店から集められた売り上げの万札の記番号を知りえたのか』
と言う疑問の答えが、爺、お前だからだ、この設定が銀座じゃそもそも今ひとつ
しっくり来ないだろうが


「なるほどのう、きしくもワシが通う『倶楽部ガンジガラメ』の名前は、
お主の気持ちを反映してしまっていたというわけか、次回はある程度、大筋の仕掛けを
組み立てた後、執筆にあたるようにすることじゃカッカッカッ」


お言葉ありがたく頂戴しておきますハイ






「ご隠居、いったい誰と、お話されておられるのですか?」

「イヤイヤ角田警部、この年になるとなぁ、どうも電波に敏感になっていかん、カッカッカッ
しかしこの108号と言う盗人も面白い奴じゃなぁ、ネットの掲示板とか言う奴で
この程度の噂を立てられたぐらいで何をムキになっておるんじゃろう」

おどけた調子で老人は角田警部の目の前にその日の
新聞の一面を広げて見せた

「108号、セメント業界の重鎮、坪内昭三氏の誘拐を予告」


「動機に関しては我々にも何とも言えませんが、少なくとも匿名で送られた、108号を名乗る人物の
誘拐予告に同封された万札の記番号は『忍者丸』の公開した物と一致しておりました
これを公開した人物は書き込みの手順から重要参考人の本物の忍者丸である可能性は高いと思われます

何度も言いますが・・・

で す か ら 今 夜 『 ガ ン ジ ガ ラ メ 』 に 行 か れ る の は、
偽 者 の 警 察 O B と 言 う こ と で 、 ご 納 得 下 さ い 


「いやぁ、この盗人もワシの顔ぐらいは知った上での行動じゃろう、わしゃぁ行くよ、
稀代の大泥棒「108号」の捕り物に協力すると言うとるんじゃから文句言う筋合いはなかろう」

「ですが・・・ご隠居」

「文句は言わせんワシとて、合気道初段の心得有り、この程度の盗人に遅れはとらん・・・




それに第一・・・・・」



「なんですか?」

老人は角田警部を子供のような目で見るとこう言った


「こんな面白い事、自分以外の人間にやらせてたまるかカッカッカッ

いや実際、盆栽弄りにも少々飽きたのでなホッホッホッ!」






続く→http://mkbag.btblog.jp/cm/kulSc02XQ45466909/1/



4月29日(金)09:27 | トラックバック(0) | コメント(0) | 丹下幸平 百万円のツボ | 管理

百万円のツボ 其の7

797 :名無しさん@5周年:2005/05/03(火)16:13:38 ID:F/hcRqZC
忍者丸降臨してくんないね

798 :名無しさん@5周年:2005/05/03(火) 16:13:47 ID:NhVy5cNU
名前欄に忍者丸と書かないだけでござる、拙者こそ、あぁなにsgkhhn


799 :名無しさん@5周年:2005/05/03(火) 16:13:51 ID:F/hcRqZC
>>797

通報しますた

800 :108号:2005/05/03(火) 16:14:17 ID:Z4ZgBM7o

クソッタレいるのか!忍者野郎!俺が108号だ出て来い!


いいか!忍者野郎!たった今、宣戦布告だ、黙ってりゃ!いい気なりやがって!

ネットの向こうでニヤニヤ俺の首を締め上げて楽しんでんだろうが、もうすぐ終わりだ!

匿名掲示板で、無責任なアホどもに紛れて自分は絶対安全なんて決め込んでんだろうが

お前は俺を怒らせた!

必ず正体、突き止めて嫌っていうほど、お仕置きしてやるからな!



覚悟しとけ!!


801 :名無しさん@5周年:2005/05/03(火) 16:14:45 ID:q/P+9qNC

そのコピペ見飽きた



犬猫病院の夜から二日目、夕暮れに丹下と九十九里は横浜の港にいた

「場所を替えつつネット喫茶で書き込んでこれで30件目か・・・
お前の運転にもなれたがまぁこの辺で一区切りだな・・・でもよぉ、こんなもんで反応するか?」

「いやぁ、何とも言えないっすけどね、今ネット上で取り合えず出来る事は、こんぐらいっすよ
でも実際こっちが本物と証明出来ないから嫌がらせの域をでてねぇか・・・」

「もうちょっと、何とかなんねぇのか?ハッキングして
TCP/IPがどうのでピコピコのバシーン!ってな感じでさぁ」

「ピコピコって・・・ハァ・・・甘いっすよ、甘い、今のネット社会で、そんな昔のSFみたい
な都合の良い事は俺ぐらいのPCオタクじゃ不可能に近いっす、丹下さん意外とオッサンっすね」

「しかしなぁ、方法がアナログだよなぁ・・・ガソリン代だけで涙が出そうだ」

「でもね丹下さん、思うけど相手はどう考えてもデジタルのプロ中のプロ
まずあの掲示板に鼻歌混じりで多数のプロキシ使って接続出来てるってのが結構、凄いんっすよ」

「よく解んねぇ・・・」

「何回も説明したでしょうがぁ・・・・・・だからオッサンは困るよ・・・」

「うるせぇ!俺だって理解しようとはしてるんだ!」

「まぁまぁそんなに熱くならないで下さいよ・・・ったく・・・もっぺん説明しますから」

九十九里はピアスだらけの耳を、ほじってめんどくさそうに話はじめた



4月28日(木)09:33 | トラックバック(0) | コメント(0) | 丹下幸平 百万円のツボ | 管理

百万円のツボ 其の6

喫茶店で丹下が握り締めていたのは
島木に内緒で置いておいた、へそくりの黄桜銀行の万札だった。
これが忍者丸が公表した記番号の一枚にバッチリ合致したのである

巨大掲示板には、丹下のヘソクリの記番号がズラズラ並んでいた

忍者丸がこの番号を何故、知っていたかと言うのは謎だ、大問題だが

しかし今、丹下にとって大事な事は、そんな金を使う気になるほど金が無いという事実だった

情けない話だが、由香に電車賃を借りて島木にヘソクリの50万の洗濯を依頼したら
20万しか残らなかった、ネットでの大騒ぎを考えれば、これは、とんでもなく良心的だが・・・・

「お前、どうするんだこれから?俺から借金するか?」

島木が言うと心配してるのか、型に嵌めようとしているのかサッパリ解らない

「例の医者、紹介してくれ」






高田馬場の、薄汚い犬猫病院に丹下と悪徳医者、異常にガタイの良い助手のロペスが
例のボロアパート(其の1参照)の旦那が乗った手術台を囲んでいた

「すぱっとお願いします」

「そうだな、俺も眠くなってきたからさっさとやるか」

「たんげさーーん・・・」

「ダイジョウブヨ、先生メイイヨ」

「本気なんですかぁ・・・」

「本気も本気だ、俺だって背に腹は変えられねー、
第一お前、確かに『俺の腎臓と肝臓を買ってくれ』っていってたじゃねーか、だから買ってやる」

「いーねぇいーねぇバイオレンスだねぇ仁義無き世界だねぇ、まぁ心配すんな
しばらくは相当、不自由な状態だが人間は慣れる!ズバット借金返しちまえ!ロペス全身麻酔!
ェンド、音楽」

「?」

「今日ハ、まだむばたふらいノありあ♪」




ロペスは、鼻歌を歌いながら場違いなオペラのCDを大音量でかけた




「マリアカラスか、さすがロペス、いい選曲だ」

「たんげさーーん・・・」


手術室にマリアカラスなんて最悪だ、
借金野郎は、青い顔をして小便を漏らしていた
ガタガタ震えながら丹下の顔をひきつった笑顔で必死に見ていた


「俺は本気だ悪いな、ロペス、やってくれ」


まだ、涙を流しながら丹下の顔を必死で見ている
こいつまだ、どうにかなると思ってやがる、そんなんだから、こんな借金する
事になるんだ、情けねぇ・・・丹下は思わず目をそらした冷たい汗が背中を、つたう

麻酔装置をロペスが運んできた

「タコベヤイクヨリマシ!、丹下サンイイ人ダヨ」

そうさ、情けないもんさ、人は悪意から借金なんかしない

今日この男を拉致った時、家族は三人で夕食を喰っていた、ノンキにグラム200円の
牛肉でスキヤキなんか喰ってたのが、いけねぇんだ、前と、おんなじように
演技してりゃぁもしかしたら連れてこなかったかもしれねぇってのに・・・

なんで、こんなにコイツら甘いんだ

裏も表もねぇ、演技してる時も本気なら、こっそり借金取りに隠れてスキヤキ喰ってる時も本気なんだ

そうさ、情けないもんさ、人は悪意から借金なんかしない

『話の解る街金』の事、バカにしながら家族団らんしてようが、それは悪意な、わけじゃねぇ

だって旨いに決まってるじゃねーか

なんでこんな奴らばかりなんだろう・・・




「丹下さん!頼むよ!悪かったよ一生懸命返すよ、職も探すだから!だから!」


とうとう泣き出した


少 な く と も 今 は 本 気 だ


だ が 明 日 に ゃ 喉 元 過 ぎ て 甘 え 続 け る ん だ



人 間 な ん て 大 体 そ ん な も ん だ 俺 も 含 め て





「よし、それぐらいでいいだろう・・・止めてくれ」

「エッ丹下サン?」

「いいんだよ、十分だ、音楽も止めてくれ」」

ほっとした手術台の上の借金男は、言葉にならない、うめき声を出して笑い崩れるように泣いていた

医者はニヤニヤしながら丹下を見ている

丹下は借金男の首根っこを掴むと言った

「いいか?1ヶ月以内にバイトでもなんでもいい、働け!それでとにかく金を一銭でも返すんだいいな?」

「ふぁい。。。。」

「約束守らなかったら、次は本当にやるからな・・・今いくら持ってんだ!」

目を、つぶって手を合わせていた借金男は必死に脱いだ服にしがみつき
慌てて財布を、ひっくり返すと小銭がバラバラ床に落ちた

札は一枚も無い

腰が抜けた男は慌てて小銭を拾い集めようとして尻餅をついた

丹下は、その金を拾い集めると、所沢までの330円だけ残して、借金男を犬猫病院から叩きだした





「キャンセル料は、キッチリ貰うからな」

「解ってる、いくら払えばいいんすか?」

「50万、この場でキャッシュしか受付ねぇ」

ぎょっとして、思わず汗をかいた丹下をロペスが、指をボキボキ鳴らしながら睨んだ
丹下の倍ぐらいは、体格がある、こんな狭い所じゃ逃げ切れない
少し考えて手術台に胡坐をかくと、二人を睨んで言い放った

「わかったよう!俺の腎臓もってきやがれ!」





それを見て医者とロペスは顔を見合すと笑い出した

「お前は、本当甘い野郎だ、島木の言ってたとうりだよ」

「なんだって?」

「島木サン、丹下サン、絶対デキナイッテイッテタヨ」

ゲラゲラ笑う二人の前でバツが悪そうに、ふてくされた丹下は頭をボリボリかいた




病院の玄関で靴を履いていると、後ろから医者が丹下にこう言った

「島木もなぁ、時々使う手だ、あいつはどうしようもない奴だったらやるけどなぁ
また用事があったらいつでも来い」

「いや、多分もう二度と、こねぇ」

「まぁそれもいいがな」




高田馬場の駅で財布を広げると15円しか無かった
さっきの犬猫病院にキャンセル料の五万円とありったけを払ったからだ
アパートに帰りゃまだ、銭は無いわけじゃない


ジャケットを脱いで腰に巻き、ネクタイを外すと


丹下は意を決して、所沢に向って走りはじめた。



4月27日(水)09:37 | トラックバック(0) | コメント(0) | 丹下幸平 百万円のツボ | 管理

百万円のツボ 其の5

歌舞伎町に、とある名物親父がいた

毎週火曜の夜に現れてはクラブ「ガンジガラメ」で100万円使って行くのだ

居酒屋なんかで絶対決まったメニューで2980円、毎週土曜キッチリ飲んで行く親父
あの感覚で大金を使うのである

80過ぎのこの爺さまの名前は坪内昭三


「曰く、わしの事を倶楽部ガンジガラメのホステスは百万円のツボと呼んだわけじゃ」

「あら、百万も使える倶楽部の割には安易な、あだ名ね、
それに銀座なら解るけど歌舞伎町ってのは不自然じゃ無い?」

「今回はタイトルの後に内容を追っかけてるから、
どうかこの程度で勘弁してくれと言っておるホッホッホ、小さい奴よのぉ」

「?」


物語の後半で今の予定では、頻繁に登場する事になってるから、納得しろ


「危険じゃなぁ危険じゃなぁ、物語に唐突に新しい人物が登場するのはストーリー迷走のもとじゃよカッカッカ」

「ツボ様、誰と話してるの?」

「内緒じゃホッホ」






警察が「忍者丸」を追いかけている事をマスコミに公表してから
1週間が過ぎた、偽忍者丸は例の巨大掲示板の何処かに五分と開けずに出没
していたが、そんな野次馬の一人が警察の事情聴取を受けると言う事件の後は、それも静まった

どうする事も出来ないと言うわけで九十九里に調査は続行させる
九十九里の月給を例の200万から出すと言う約束で話はつけた

とりあえず静観と決めた丹下だったが、頭を抱えていた

サラリーローンの支払い期日は、そんな間にも迫っているのだ

丹下は当たり前の話だが元から泥棒だった訳ではない

国体出場経験のある体操選手だった丹下はオリンピック出場に挫折した後
ただ何となく20の頃に関西から埼玉にやって来てお決まりの無目的な青年をやっていた
由香はその頃からの知り合いだ

そんな無目的な生活の果てに困って借金し長い間、僻地で働かされる目にあった
このタコ部屋に放り込んだのが実は島木

何とか持ち前の体力でタコ部屋から抜け出して一大決心した丹下は貸す方に回る決心をする

4年間資金を貯めて、無免許で今の表の商売を始めた

ここまで言えば、ちょっとした創業者の武勇伝である、だが回収がうまく行かず
一年後にはショートした資金の補填の為に現在の裏稼業を始める事になってしまった


島木にこそ、借金はしていなかったが、結構ヤバイ状況なのだ


貸してる金は結構ある、それから地道に回収したが、利息の足しになる程度

島木に借りたらまたタコ部屋送りだ、あの男はその辺は抜群にクールな男なのである




「出勤前だし、おごってもらうから、ありがとーコウヘイちゃん」

行き着けの喫茶店で夕暮れを過ごしている丹下の前に由香が座っていつものようにブルーマウンテンを頼むと
いつもと違う丹下がそこにいた



「・・・・おごってくれ、頼む」





「なにそれ!冗談じゃないわよ!」



丹下は一万円札を握り締めてひきつりながらノートパソコンの前で氷っていた


「忍者丸の公開大捜査!とりあえずこの万札の記番号をコピペして欲しいでござる!」






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4月25日(月)22:25 | トラックバック(0) | コメント(0) | 丹下幸平 百万円のツボ | 管理


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