丹下幸平@窃盗犯108号
 
みなーみBlog
 



2005年6月を表示

暑い Ⅳ

旧来の瓦一枚の重さは、平均約3キログラム。
この重さの理由と言うのが風に対して強くする為なのです、日本家屋が台風に対して強い
秘密は実は、この瓦の「重量」に秘密があると言えます。

しかし反面、固定の為の土まで含めますと、家屋に対する負担は相当な物です。
耐震性を考えた場合、最近の建築に比べ脆弱な素材を使っていた建築法改正前の80年代前半の住宅は
20年が過ぎ、老朽化し、非常に脆い状態である事が多い。

ようは、頭が重すぎるのです、かといって皆さん、なかなか、どうして家立て直せるかと言えば
おいそれと、そうは行きません。

そこで、わが社がご提案するのは、新建材「鬼瓦くん」

「鬼瓦くん」は従来の瓦の約3分の1の重量、お値段も、お求め安い二分の一。
また当社独自の接着剤と、ビス止めによる工法で「風に強く、地震にも強い」タフな住居に
あなたの大切なマイホームを生まれ変わらせてくれます。

ご予算は、建物の補強工事を含めても、立て直す場合の半分以下、カラーバリエーションも12種類

「鬼瓦くん」只今、施工費一割引のキャンペーン中です。



以上が、今、俺の背中のリュックとショルダーバッグに入っている商品に付けられた口上だ。
軽いのは、珍しくも無い。樹脂製品だから。別にどうってこたぁない、もっと軽い商品だってある。
キャンペーンの施工費一割引は、接着剤に程度の低い体に悪ーいのを使うって意味。

まぁいい、それを売るのが、俺の仕事だ、しかしこのカラーバリエーション12色を
全部持たせて営業させるってのは、頭がオカシイとしか言いようが無い。
うちの社長は、体育会系で、そういうのが好きらしいが、お客は、別にそんなこた望んじゃいない。
要は見習い営業に対するシゴキだ、大阪の郊外の住宅地に、何人かマイクロバスで連れて来られて
「鬼瓦君」12枚とパンフレット100部、ペットボトルのお茶を渡されて放り出されたのが
今日の朝10時、最低30件回って、訪問した家から会社に報告しなきゃ帰らせてくれない。
体育会系なんてもんじゃない、こりゃ軍隊の仕打ちだよ。

毎年の恒例行事らしい、ここで日射病になって脱落するのが、半分もいる。

一時間毎に義務化された、定時連絡の三回目を、さっき済ませた。
何とかカントカ、7件回ったが、正直先が思いやられる。

適当にサボリタイ所なんだが、この辺りは住宅ばかりで、コンビニは、おろか喫茶店ですら無い。
渡された、お茶は、とっくに汗になって流れてしまった。

俺は、元々文化系の人間だ、見かけはガッチリしているけれど、こういうのはスマートに行きたいんだよ。
ちきしょー、でも資本主義の末端には、思った以上に理屈なんて許されねぇ・・・働くってのは、つれぇなぁ。

逃げ水が、漂うアスファルトの風景、ここは、きっと日本じゃなくて砂漠なんだ。

そんな、泣き言が、頭の中でグルグル回りだした頃、目の前の階段の上に清々しい白のワンピースを着た
日傘を指した女が見えた。へとへとになってる時の体ってのは虫みたいなもんだ。
俺は訳も無く、その女に向って歩き始めた。

階段の頂上に、たどり付くと、60代の男が女の日傘の下、歩道の縁石の上に座って
休んでいた、顔色が悪い。

「どうされました?」

「教祖さまが、先ほどから、お腹が痛いと申されまして・・・」

オイオイ、教祖って、どういう意味だよ。普通だったら御免こうむる所だが。
答えた女の適度な香水の品のいい香りが、疲れた俺の足を止めてしまった。

「申し訳ありませぬ・・・」

「いやぁ、袖すりあうも何とやらって言いますからね」

女と違って、加齢臭をプンプンさせるインチキ教祖を、俺は背負って歩いていた。
本当に俺はバカだ、文化系なりに体力はある方だが、女の魅力ってのは偉大で、男はチンケな生き物
だってのを、汗をドロドロかきながら、俺は実感した。

三軒の家を回ったが、この二人すでに、この住宅街では有名らしく、どこも相手にしてくれない。
不味いな、俺まで仲間と思われそうだ。歩く最中、女と教祖にインチキ宗教の話を延々とされた。
キリスト教系の新興宗教でまだ法人資格も持って無いようだが、疲れて無くてもどうでも良いと思える
電波系の宗教だった。

「よって、イエス・キリストは日本人であり、日本に流れ着いたマグダラのマリアが
教祖様のご先祖である事が証明出来るのです」

力強く、あんたみたいな美人が、そんな事言うな、世の中が終わりそうな気分になってくる。
そう思いながらも、俺は何とかこの苦行に耐え、笑顔で対応していた。

案外、俺、営業向きなのかもしれないな・・・
それにしたって、限界だ、さっきお礼に飲まされた、魔法瓶に入った臭くてクソ不味い茶色い水は
二度と飲みたくない、そんな時、林の、そばに自動販売機が設置されているのが見えた。
木陰もある「あそこで休みましょう」この辺で俺もオサラバだ、やってられねぇからな。

自動販売機に、120円を入れて、炭酸飲料のボタンを押す。
二人はしきりに例の水を薦めたが、モチロン断わった、あんなもん配ってる間は駄目だよインチキ宗教め
何となく哀れな感じもしたが、同情出来る立場じゃない。おれは炭酸飲料を一気にあおった。

「すいません、ティッシュを、お持ちですか・・・」

まぁな、教祖だって人間だって事か、申し訳なさそうな顔の女の眼を見ないように俺は、街でもらった
サラ金の宣伝入りのポケットティッシュを渡してやった。

二人が、林に入りしばらくして、ブリブリと下品な音と共に、嗅いだ覚えのある臭いが漂って来て
俺は飲まされた「御聖水」と炭酸飲料を全部、目の前に吐き出した。




僧正の野糞遊ばす日傘哉(一茶)


お後がよろしいようで・・・・次も「暑い」で行きます。


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6月18日(土)16:37 | トラックバック(0) | コメント(0) | お題でワンシーン | 管理

暑い Ⅲ

木造の信じられないぐらい、ボロイ大学寮、大学のまん前にある
それを、学生達は揶揄して「鳥小屋第二金剛寮」と呼んでいた。

俺の部屋には、扇風機しかない。

冬の隙間風が、今ありゃぁいいのによー。

貧乏学生大集合のこの建物だったが、不断のバイトと代返で稼いだ金で
なんとか、クーラーを購入した奴が何人かいた。
三部屋隣の後輩もそうだ、行って見るか・・・てなわけで行ってみた。

予想通り、すでに部屋の前には何人かのスリッパが並んでいた。
それにしたって、今日は多い。6畳の部屋に7足もありやがる、部屋の中から
マージャンパイをジャラジャラ言わせる音が聞こえてきた。

ノックもせずにドアを開ける、外気よりは、さわやかな風がタバコの煙と共に
流れて来た、いやぁこりゃいいや。

「よーH、俺も仲間に入れてくれ」

Hは、俺と同期のYの後ろで小さくなって座っている

「モー限界っす勘弁して下さい」

「うるせー、お前がそっちの隅にいきゃ良いだろ、ほら開けろ、ホラ!」

「おーM、やるか?そろそろAが抜けるんだ」

「また、弁当、賭けてんのか」

Hの人権など、無視、今日は他のクーラー軍団は、ほとんどいないし、そういう奴の
部屋の鍵は、大概、厳重で、勝手に入りたくても入れないから仕方ない。
後一年、がんばりゃコイツにだって後輩が出来る、だから遠慮なんて
しない、もっとも、クーラーを買うような人間がこの鳥小屋に二年残ったって話は聞かないが

部屋の隅で小さくなりながら、かわいそうなHは猫を撫でていた。

Aがビデオ屋にアルバイトに行って、ハンチャンが終わった頃には俺の
尻にも根がはっていた、タバコの煙が粋な意味では全く無いレベルで眼にしみるが
サウナ状態の俺の部屋にくらべりゃ、よっぽどマシだ

そうおもっていたら、イキナリ停電、オイオイまたかよ・・・

暗い中「またあいつか・・・」とみんながヒソヒソ言ってると、いつもの火の玉がドロドロ出てきた
うちの寮の一番古い先輩だ、青い顔をして先輩が喋りだした。

「こんばんわー」

「先輩なんすか、今日は、勘弁して下さいよ」

「いやぁ、何だか楽しそうだったものでぇ」

気温が、ドンドン上がってくる。この先輩は、10年くらい前、うちの寮で首吊っちゃったんだが
原因が、女にフラレタだけらしく、その上しょっちゅう出てくれるので誰も怖がらなかった。

慣れたもんで、部屋の主が蝋燭を立てる、この人が出てくると電気がストップするので困る
また、ひとしきり話を聞いてやらないといけない、みんなうんざりしていた。

「で、今夜は、どの失恋の話です?」

「いやぁ、今日はお伝えしたい事があって来たのです~」

「はぁ?」

「もうすぐ、この部屋に異変がおこりますぅ」

「はぁっぁああぁ?」

後輩が撫でていた猫が「にゃぁ」と、めんどくさそうに一声鳴くと、先輩はドロドロ
音を立てて消えて行った。


みんな、ほっとして、電力の回復をまった・・・いつもだったら、五分もすりゃぁ、回復するんだが・・・

何かがぴょーんと飛んだ


「ののっ蚤だ!」


だれかが!大声で言った!
「ひぃ!」っと悲鳴を上げて猫を放すH、電気が回復した後、我々がパニックに陥ったのは言うまでも無い
マイクロ吸血鬼が、ぴょんぴょん飛ぶ、うわ!やられた!脇が、脇が野戦病院!うががが!

先輩が電気止めたのをキッカケに活動始めやがった!ちきしょー!今度、祈祷師呼んでやる!

混乱してモタモタしてる間に
蚤空母(猫)なんか飼ってるくせに潔癖症のHが、錯乱して買いだめしてるバルサンに火をつけた。

あぁまぁ確かにクーラー効かせる為に、この部屋、めばりしてるしねぇ・・・ってやめろ!バカ!



蚤虱 こゑたてて鳴く 虫ならば 我が懐は むさしののはら(一茶)


お後がよろしいようで・・・・次も「暑い」で行きます。

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6月17日(金)09:23 | トラックバック(0) | コメント(0) | お題でワンシーン | 管理

坪内昭三1947 其の15

ジープのエンジン形式はSV(サイドバルブ)である

フォーサイクルガソリンエンジンの形式としては
最も初期の形である、燃焼室に並列してバルブのスペースが必要な為、圧縮率を効率よく
決定的に上げる事が出来ない構造なのが弱点で、我々の今の生活では、せいぜい古い発電機
や水汲みポンプにその形が残っているぐらいの古い形式である。
エンジンの分解写真等を見ると「バルブは燃焼室の上にある物」と思っている
我々には、非常に不思議な構造として眼に写る。

またまた、比較対象としてドイツのキューベルワーゲンを上げると
ワーゲンはOHV、手元の資料を軽く流して見て見たが、アメリカの後方支援車輌
には圧倒的にサイドバルブのエンジンが多く、対照的にドイツはOHVが比較的多い

つまらないウンチクを並べて申し訳ないが、もう少し続けると
OHV形式は、ドイツ生まれの物で、サイドバルブはアメリカが熟成させた物だ

ハーレイダビッドソンがOHV(ナックルヘッド)を採用したのが1936年
けして、アメリカに技術が無かった訳ではない。
そこには、間違いなくアメリカの思想が存在するはずである。

「ドイツのエンジンは始動に時間が掛かるが、瞬発力があるのが強みだった」

ドイツ戦車エース、オットーカリウスのコメントである。
この瞬発力と言うのは、結局OHVによる圧縮効率に関する優位性に他ならない
おそらく、彼もアメリカの鹵獲車輌のジープ等に乗った経験があるはずだ
恐らく比較されたのはそう言った後方支援車輌が多いだろう、よってこれは言い換えれば
「OHVはSVに比べ瞬発力がある」とも言える。

確かにアメリカが、マシントラブルを物量でカバーした側面は、大きいと思うが
カムシャフトに連結したバルブリフターでバルブを直接押し上げるSV(サイドバルブ)に
比べるとOHVは、DOHC等に比べればまだまだ単純とは言え、燃焼室のてっぺんに
バルブの開閉機構を持っていくための、ロッドなどの中間に入る部品が多数あり
決定的に部品点数が多い、オイル系統が複雑になり暖気に時間がかかる。
また中間に、こういった部品が一点でも入ると言う事は
それだけ調整等に手間がかかると言う事でもある。信頼性が高くなるのはモチロン
部品点数の少ない方だ、戦場でのメンテナンスも、サイドバルブの方が断然やり易いだろう。
OHV(オーバーヘッドバルブ)はピストンの頭を見るだけでも気を使う事になるが
それに対してSVは、蓋自体にはプラグ以外何も無いのだからその作業効率の良さは歴然だ。
第一、壊れない、壊れる原因が少ないのだから当然である。
へたる部品と言って思い浮かぶのはバルブスプリングくらいなものだろう
その上ジープは水冷機構を備えており、砂漠等でもタフな走破性を保ったのも想像に難くない。

キューベルワーゲンも、信頼性は、けして低くは無い
(クロガネ4起は低かったようである、ちなみに形式はOHV)またこう言う種類の車輌にあえて
OHVを採用するあたりに日本人としては、共感する物があることも事実ではある。

だが、しかし。

「どっちに乗る?」

と戦場で問われれば、迷わず筆者はジープを選択する。
フロントラインの兵器なら、迷う物が敗戦国側にも多数あるが、これに関しては
迷いようが無いのである。



6月16日(木)01:54 | トラックバック(0) | コメント(0) | 坪内昭三1947 | 管理

暑い Ⅱ

「バカ野朗!てめぇ何やってんだ!しっかりケツを右に振れ!」

「ハイ!」

公団住宅の狭い階段の踊り場で、馬鹿デカイ箪笥を振り回しながら茶髪のチンピラが
俺に向って叫んでいた、箪笥のケツを俺はいつものように必死に押した。

大学五年生になって、親からの生活費はストップ、まぁ出なきゃいけない講義は少ないし
何だかんだいっても寮の家賃は払ってくれてる。
つつましく生活すりゃぁ、週4のこのアルバイトでも十分喰っていける。
てなわけで、前から気になってた、とあるガレージの張り紙の
「日給8千円、週2回~5回、運送助手」って奴をやって見ることにした。

張り紙に書いてあった、電話番号に電話して、俺の住んでる寮の最寄り駅から三つ行った所にある
事務所に行くと、いきなり採用。次の日、朝8時、張り紙の貼ってあったガレージに行くと。
一つ年下の安物のサングラスをかけた、チンピラが俺を待っていた。

「おはようございます、よろしく」

「あぁ、まぁ乗れや・・・」

仕事は、量販家具屋の配送の下請けだ、そこそこの価格の箪笥やらテーブルやらを体力を
駆使して、お客の部屋に放り込む。

まぁガテン系の仕事である、それと何より俺が組まされたこのチンピラがキッツイ男で
粘り強く付き合えば、それほど悪い奴でも無いのだが、初めたばかりの学生にメチャメチャな言葉で
毒づく、マイルールの中で働く職人で、助手がシートベルトを締めただけで
「そんなんで仕事が出来るかバカ野朗!」と大声でわめく。
要は理不尽な、野朗なのだ。それほど後は引きずらない性格が良く見えるまでは時間が必要だ
と言うか今思えば、イワユル、ちょっとした「ストックホルムシンドローム」になっていたのかもしれない。

そんな奴なもんで、バイトが一ヶ月マトモに続かない。

しかし俺は、もう三ヶ月以上続けていた。
学生っつっても、俺の場合は、働かないと喰えないのである、仕送りしてもらってる奴とは
ちょっと事情が違うので我慢出来た、段々感覚が麻痺してきて。
少々の言葉では動じなくなり「これはこれで、悪か無いかな」なんて思ってた所で
「なんか良いバイト無いかなM?」大学八年生の先輩に聞かれて紹介したら、先輩は
週一だったが、一ヶ月で辞めた「いやぁやっぱりキツカッたすか先輩?」とその後聞いたら
ものすごく、うらめしそうな顔で黙って睨まれてしまった。俺には、そういうことはしなかったが
もしかしたら、殴られたりしたのかもしれない。

どうやら、学生アルバイトとしては、最悪の部類に入るらしい。



6月13日(月)10:09 | トラックバック(0) | コメント(0) | お題でワンシーン | 管理

暑い Ⅰ

いらっしゃいませ~いらっしゃいませ~本日もパーラーフリッツへの、多数さま、大勢さまのご来店
誠に、あぁまぁことに、ありがとぉぅございます

さぁ本日もトップ№1番台を筆頭に2番台、3番台、5番台、6番台!
ラッキーセブンを真ん中にー!ラスト№367番台にいたりますまで
さぁ全機全台、あぁ全機全台、釘を甘く、広く、大きく広げましての大解放!
全てが優秀機、優秀台となっておりますれば、

さぁどうぞ奥へ中へ、奥へ中へとお入りいただきまして
本日のお客様の優秀機、優秀台を、お決めいただきまして、どうぞ本日も、ごゆるりと、お楽しみ下さい!

さぁお客様、パチンコの必勝法、なんと、なんと申しましても粘りと頑張り、粘りと頑張りで御座います
さぁ本日も、日ごろ鍛えられたその指先その黄金の腕前をフルに発揮いただきまして

さぁ本日もぉご遠慮なくさぁジャンジャンバリバリ!
あぁジャンジャンバリバリと、お出し下さいませ、おとりくださいませぇ~。



今日も、オッパジメの開店マイクが終わり、いつものとうりの単調な、ユーロビートの繰り返しが始まった。
昨日、新装開店が終了して今日から平常営業10時開店。

少々昨日は出すぎた、赤字になりすぎちゃぁいけないんだよ、パチンコ屋ってのはね。

そもそも、当たり前だが、パチンコってのはセコイギャンブルだ、みんなが持ち寄った金を
偶然が偏らせて嬉しい奴と寂しい奴に分ける・・・で実際の総和はマイナスでもプラスでもない。
店の大盤振る舞いってそんなもんだ。

だから店に利益が残らないぐらいで新装開店はちょうどいい、出ない開店なんてみられたモンじゃないけれど
赤字になりすぎるのは、それはそれで不味い、だから「大きく甘く」なんて今日は大嘘

それでも客はやって来る、朝からガキ連れてくるどっかの主婦、なんの仕事をしてるか解らないオッサン
気のいいヤクザ、モンスターハウスの168番台にしか座らない親父、土地成金の百姓。
しかし今日は朝からまた、特に濃い連中が集まりやがった、嫌だなぁ・・・・

パーラーフリッツは、結構古いと言うか場末な匂いのプンとするパチンコ屋だ
建物なんて安普請で、本当そのまま「ハコ」。壁なんて薄くて、この前、ぶちぎれた「気のいいヤクザ」
が、どついたらエライ大きな穴が開いた。

そんな、いい加減な建物だから空調の風の流れなんて何にも考えて無い

「ちょっと、寒すぎるんだけど」

「ハイハイ、待っててくださいね」

あわてて、空調の一部を切る、そうすると今度はその反対側から「暑いぞバカ」ってな具合だ。
そんな具合で、今日もいつものように無駄な努力を重ねていたら、昼飯を喰った後あたりからおかしくなった。

空調が。

早番の責任者は俺だ、どうしよう。ショウガナイからドアを全部開けてみたけど何の効果も無い
前から何とかしてくれって言ってたのによう・・・シブチン店長め

お客も最初はブーブー言ってたが、諦めの放送を入れたら黙りやがった。
マトモな奴らは一部、帰ったが前述の連中は帰る気配も示さない、店長に電話をかけてみる。

「このままじゃ、お客さん全部、帰っちまいますよ」

「いや、お客ってのわなぁ、寒いより暑い方が帰らねぇもんだ」

よく解らねぇけど、まぁ仕方ねぇ、だから場末なんだよ、まぁとにかく業者に電話をかけた直後
バイトの宇宙人みたいな19の女の子が、事務所に駆け込んで来た。

「Mさん!はッハッハッハチ蜂!」

慌てて、店の中に戻ったら、ミニ戦闘機みたいな凶悪な奴が3匹、飛んでいた、忘れてた
この前から駐車場の近辺でチョクチョク見たんだ、こりゃぁいけねぇ!
あわててスズメバチ三機をそーーーっと外に追い出しドアを全部、閉めた。

タバコの煙がドンドン溜まってきやがる、どうしようも無い、酸素が少ねぇ・・・
バイトの女の子の制服が汗で、チョット透けるのは、おつなもんだが、業者はまだか!

客まで含んでヤケッパチの状態になってきた、南のガラス窓を覗いてみたらオテントウさんは
一番高いところに座っておられた。もうやけくそだ。マイクするぞこの野朗!

「235番台の、お客様!取りましたお見事、777、無制限ラッキースタート!」

なんでこんな状態でも、こいつら、帰らねぇんだちきしょー。
権利物コーナーの島から赤ランプ、行ってみたらウィッグの隙間から汗をしたたらせた、いつものオバハン。

「ねぇ、当たってんでしょう、何とかしてよ」

権利物ってのは、今は無い種類の台だが、要は一回、当たると後二回、高確率で当たる台である
しかし、一回、当たってドル箱一杯出て、例え16分の一の確率でも当たらない時はドル箱が
空になっても当たらないなんて事もある、しかも今日の釘はギチギチだ、回らない回らない
オバハンの箱はすっかり空になっていた、こういう時、うちの場合は店員が当たるまで回してやる。

不服そうに汗を拭くオバハンの前の台のガラスを空け、玉の付いたゲージ棒を、役物に突っ込んで
センサーに当ててやって回す、オバハンの安香水の匂い毒ガスのごとく・・・うーたまらん。

ちきしょう!あたらネェ!業者は、まだか!泣くぞしまいにゃぁ!
20分ぐらいが経った、オバハンは暑さに喘ぎながら、扇子をパタパタやっている。

あんたそんなにパチンコが好きなら、旦那と別れて、この台と結婚しろっつーんだ。
しかも、汗が出すぎたせいか、オバハンの匂いが安香水から体臭に変わっていた・・・泣けるぜ・・・
ようやく、高確率のリーチが来た時、業者がやって来た。
何とか二回目が当たって、ほっとした俺は、思わずマイクで言った。


「おめでとうございます、258番台の、お客様ぁ、ワッキースタートー」

お後がよろしいようで・・・・次も「暑い」で行きます。

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6月11日(土)00:26 | トラックバック(0) | コメント(0) | お題でワンシーン | 管理


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