丹下幸平@窃盗犯108号
 
みなーみBlog
 



坪内昭三1947 其の7

橋本と坪内が飛び出した後、店に残ったアキエことソルミが座って
テーブルの上に残された油紙に包まれたワンピースを見ていると

「忘れ物ね、どうする?アキエちゃん」

カウンターに立て肘をつけ、和服を着たママが聞いた

「・・・・届けます」

そう言うと橋本が置いていった傘と油紙の袋を持ち、店を出て行った

「若いっていいわねえ・・・」

微笑んで見送ったママが髪を直すと、うなじにチラリと刺青が見えた


坪内と橋本が店に着くと、歌舞伎町の坪内の味方になっている着流しを着た
ヤクザが泥の中に頭を打ち付けるように土下座した
周辺の店も巻き込んで派手に壊されたようだ、缶詰が散乱している

「すまねぇ!油断していた!このケリは必ずつける!」

「高倉さん土下座なんか、後でいい!わしの女房は、まだ見つからんのですか?!」

「今、組員全員が探しとる、残念だが知らせは、まだ無い!スマン!」

「何も手がかりは無いのか?」

「奴ら、おかみさんが店じまいしてる時に黒い車で、この辺りの店メチャクチャにして
サライに来やがった車種は・・・・日本車だあれは・・・トヨダの鼻の長い奴だ」

周りを見ると、巻き込まれて怪我をした人間が何人かウンウンうなっていた

「そりゃトヨダのAAだな、奴らがここに来てから、時間は?」

車種を聞いた坪内は、ジープの止めてある空き地に向かって走って行った

「一時間弱だ、山手線沿いに目白の方面に向かったのを見た奴がいる、この雨だ、そう遠くには行ってネェ」

坪内を追ってジープに着くと、坪内は無線機で話している最中だった

「ウェイン少佐か?」

「なりふりなんか、構ってられるか!女房は、わしの子供二人抱えてるんだ!悪いか!」

怒りの表情を橋本に返す坪内

「いや、適切だ、奴ら線路沿いに目白方向に向かったらしい」

「よし!乗ってくれ橋本っさん!」

慌ててエンジンをかけようとする、坪内だが、こんな時に限って、かからない
4度目にキーを回して火が入らなかった時、悔し涙を流して坪内はハンドルを殴った

「ちきしょう!」

「どけ!俺が運転するからお前は、無線を聞いてろ!」

無理矢理、坪内を助手席側に移し、運転席に乗り込む
三枚重ねの座布団を車外に放り出すとカブリ気味のエンジンに微妙に
アクセルを当てながら、慎重にキーを回す橋本

エンジンが回りだした!

鼻水を垂らしながらあぜんとしている坪内

「しっかり捕まって、歯ぁ食いしばっとけ、舌噛んでも、俺は知らねぇからな」



5月26日(木)13:42 | トラックバック(0) | コメント(0) | 坪内昭三1947 | 管理

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