丹下幸平@窃盗犯108号
 
みなーみBlog
 



百万円のツボ 其の17

丹下と九十九里のコンビは限られた勝ち組しか住めない
『六本木Wills』の前にいた、アホみたいな顔でその威容を見上げている二人

「ねぇ丹下さん」

「なんだよ?」

「こう言うマンションでも、自治会とかあるんですかねぇ」

「あるらしいぜ、ビックリだけどなぁ」

「えっマジ?やっぱ、あれっすかねぇゴミ捨て場の掃除とか回り持ちでしたりするんすかねぇ」

「いやマジマジ、でもそりゃぁねぇだろ、こいつらの事だから業者買収したりすんじゃねーかヤッパ」

「やな自治会議だなぁそれ」

「いやぁでも節分の豆まき会とかはするらしいぞ」

「うっそマジっすか?」

「いやマジマジ」

「やっぱ鬼役のタレントプロダクションとか買収するんすかねぇ」

「うーんするんじゃねぇかヤッパ」

「って事は婦人会がその鬼の株主だったりするわけっすか」

「うーーんそうじゃねぇかヤッパ」

Willsの住民用の入り口付近をとうり二人は様子をうかがった
警備が当然ついており中に入ろうとする人間をチェックしている
ジロジロみている警備員を横目で見ながら九十九里が小声で言った

「どうします丹下さん、こんばんわーってわけには行かないっすよ、日改めますか?」

「支払い期日が待ってくんねーんだよ今夜で勝負つける」


二人が多分この時間帯で日本でもっともアホな会話をしている頃
屋形船では、老人が『忍者丸』の正体を語り始めた

「坪内忍、これがあのネットストーカーの名じゃよ」

「坪内?」

「そうワシの孫じゃよ」

老人は焼酎のお湯割りをぐいっと一口あおった
島木と由香は思わず顔を見合わせた


Willsの33階、異様に広い暗い間接照明された部屋の中にベッドに生命維持装置と
丹下のランドウォリアのヘッドアップディスプレイに似た装置をつけた男が横たわっていた
ランドウォリアと違うのは、この装置がこの男の眼球の動きを追うシステムを搭載している事だった
様々な情報が我々の使うグラフィックユーザーインターフェイス画面と似て非なる
表示方法でこの男の眼球の操作により処理されていた

違いは、一見して解らないがちょっとした動作がワンアクション少ないのである
介護用に特化した特殊なOSを使用しているようだ
しばらくそのリズム感がワンテンポずれた操作が繰り返され動画が再生された
Willsに設置された監視カメラが捕らえた丹下と九十九里だ
その画像を見たあと、男の顔が、わずかだが微笑んだ

眼球に操作されたカーソルが背広の形をしたアイコンの上に行くと待つ間も無く
暗い部屋のドアが音も無く開き光が差し込んだ、そこにはガッシリとした執事らしき男が立っている

「御用ですか、忍さま」

その声に反応して、ディスプレイの中に幾つかのコメントが現れた
その一つを選択すると、合成だが、よく出来た男の音声をスピーカーが発した

「108号殿がいよいよ来たようででござるよ」

「どういたしますか」

即座にベッドの男の前にあるディスプレイが反応し幾つかの長いコメントが表示される
その一つを選択すると今度は詳細に関するバリエーションが表示される
そんな操作が2度繰り返され再びスピーカーが音声を発した

「おそらく、ダストシュートあたりから侵入してくると思われるでござる・・・まったく世話がやけるで
ござる、警備装置を切っておくでござるが・・・・まぁ恐らく30分後ぐらいにはこの部屋にたどり着くで
ござろう、丁重にお迎えするでござるよ。ところで葉山?明日のゴミ集積場の掃除はどうなっているでござるか?」





続く→http://mkbag.btblog.jp/cm/kulSc02Bi45466A4D/1/



5月16日(月)01:06 | トラックバック(0) | コメント(0) | 丹下幸平 百万円のツボ | 管理

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