坪内昭三1947 其の14 |
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| 「こいつぁかなり厳しいぞ、正直言って、例の誘拐騒ぎが無かったって、 近いうちに、お釈迦になってたぜ多分」
雨漏りする、とある小さい町工場で、例のジープは、エンジンの蓋を開けられていた 「うーっ」とうなり、平田は、さじを投げるように言った。
「それでも、なんとかしてくれ、新しいジープ手に入れとる時間は無いんじゃ」
「そうは、いってもだなぁ見ろこの距離数、地球何週してるんだよ、マイル表示だぞしゃれになんねぇ」
平田が指差した距離計には、地球を15周ほどした数字が、並んでいた。
「シリンダーが元々駄目になっちまってるって事か」
「橋本っさん、そういう事だよ、すっかり磨耗しちまって、圧縮なんざヘロヘロの状態だ バルブリフターその他もスコスコのヘニャヘニャ・・・
レースに出すのによう!
どうしろって言うんだよこんなガラクタ・・・」
「泣き言、聞く気は無い、なんとかして行けるようにするんじゃ」
「解ってるよう・・・でもこりゃ改めて難問だぜ」
「まぁその辺は、平田さんの才能で、どーんと何とかしてくれや、わしゃ用があるので ちょっとここから離れる、陣地の様子も見て来なきゃならんしな」
平田が「逃げんなー!」と叫ぶのを尻目に鼻歌を歌いながら そういうと坪内は、平田と橋本を工場に残して、雨の中、どこかに行ってしまった。
「レースの間だけ、もちゃぁ良い、とにかく動くようにする事だな」
「でもなぁ、ガバガバになっちまった、シリンダーは、元に戻らねぇよ、そこが一番肝心だ」
「ボアアップするしかねぇな、出来るか?」
「設備は、何とかなるんだがね、いかんせんピストンがねぇ・・・」
そういって、腕組みして、平田は考え込んだ
「直径79.4mm×ストローク111.1mm、正規のルートがありゃぁ、使い込んだエンジン用に 若干、径の大きいパーツが純正であるはずなんだが、そんな物は手にはいらねぇ、 まぁしかし、アメ公がそんな物、供給してるかも怪しいしな・・・・。 どうせやるんなら、直径85mmぐらいの、があれば多分排気量だけは あの野朗のジープと対等に近くなる・・・もっともバルブ関係が、ヘロヘロのフニャフニャだから 圧縮比、上げるとかは危険だ・・・・う゛ーーーーーー思いづかねぇ!」
平田は、スパナを投げつけて椅子に座って頭を抱えた。
水冷4気筒で排気量2,199cc。弁配置SV方式で、54馬力、車体重量1017kg、359851台が世界中にばら撒かれた このアメリカの物量作戦の象徴のような車輌は、多くの伝説を持っているらしい。 らしいと言うのは、残念な事に、筆者が、お気楽ネット検索で調べても。 具体的なエピソードにお眼に掛かる事が出来なかったからだ。
やはりこの手のウンチクは、本当は、地道に調べるのが本筋である。
「神社の階段を登った」「箱根の山を凄い勢いで越えた」とか具体的で無い物は必ずその手のサイト にはあるが、実際に見た方のエピソードとしてのコメントは、簡単には見つからない。 それも、全国各地で似たようなエピソードがあるらしく、何だか都市伝説のような構造を持っている部分もある
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6月9日(木)11:33 | トラックバック(0) | コメント(0) | 坪内昭三1947 | 管理
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