百万円のツボ 其の13 |
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| 屋形船の中で、ヒョットコの面をした島木と坪内はノンキにプロレスアナウンサー上がり の司会者で有名な報道番組を、ねっころがって見ていた
「現場の向坂さん、どうですか状況は」
「現場です、現在、百十三名の警察官が108号を追っていますが未だ捕まっておりません 先ほど108号が捨てた人形・・・あっカメラさんアレアレ!」
「おーっと108号登場いたしましたかぁ!」
「トンでもない神業のような走りで逃げています108号は催涙ガス弾などを携行しており・・・」
「おーーーーーーーっとトンダァ飛びました正に、その姿、八艘とびの義経、いやさ猿のごとし! 108号の逃走劇が新宿の町をそのワンダーランド、まさにハンドレッドエイトワールドへと 引きずり込んでおります!108と言えば除夜の鐘まさに今現在の歌舞伎町は煩悩のハンドレッドエイト」
「ご老人どうです、何か思い出しませんかねぇ」
「正直、ワシも飲んだ相手、全部は覚えとりゃせんよ、しかもIT関係っちゅうのはどうもね」
「余り、お好きで無いようですなぁ」
「あいつら、シナジーがどーの、オンデマンドがどーのとワシのような年寄りに解りやすく 話すのが嫌いなようでなぁ、要は合理化じゃろう、そんなもんはワシらも散々やったよ 合理化って奴の正体はナンボ横文字にした所で”人様を踏み台にする”ちゅうことじゃぁ無いかね」
「おっしゃるとうりです」
「わしゃぁ誰かのようにTシャツを着とるからダメとか言う気は全然ないんじゃが、最近の、あの手合いは 機械相手にしとるせいかその人様の頭を踏んづけるってのを感じとらんような気がするんじゃよ」
「なるほどねぇ」
「いや何、商売人が人様の頭を踏んづけるのは気持ちがいいよ、そう思えなきゃ商売なんぞやっとれん でもな、自分が踏んづけとるってのを感じないような経営者はナンボ有能でも飲み友達としては記憶に値せんよ」
「私等ヤクザは、そればっかり」
「おっ?ヤクザなのかねヒョットコさん」
「あぁまぁ余計な事を言ったようで忘れて下さい」
「ヤクザは嫌いじゃないよワシは、多分あんたの組織の一番てっぺんに居る奴はワシの友達 内緒じゃけどな、カッカッカッ」
「熱燗出来ましたけどぉ」
「おー、いーねいーね、女A!早速、酌だ酌!」
「女Aってなによ!このくそヒョットコ!」
「あぁーおねぇさん、悪いがわしゃ焼酎のお湯割りで梅干入れてくれんかの」
「ハイハイ」
「庶民的ですなぁご老人」
「大体、ワシも重鎮だぁなんだと言われちゃいるけどね、所詮、焼け跡から這いずりだして散々人の頭 踏んづけて来た成金さぁ、正直言って高い酒よりカストリ、この年になってそう思うようになったわい」
「カストリですか、そいつぁ用意してねぇなぁ・・・」
「カストリか・・・そう言えば面白い奴がいたなぁ・・・」
「語尾にゴザルをつける奴でしたか」
「いや、そんな奴ぁおらんよ・・・確か一年前だったかいや二年前か・・・ 珍しくIT長者にしちゃ、冗談の解る奴がいた」
ヒョットコと蝶が目を合わすと老人はポツリポツリと話始めた
続く→http://mkbag.btblog.jp/cm/kulSc02ap454669E1/1/
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5月10日(火)23:40 | トラックバック(0) | コメント(0) | 丹下幸平 百万円のツボ | 管理
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