丹下幸平@窃盗犯108号
 
みなーみBlog
 



千石の壷 5

 殺し屋だ、そうとしか思えない、そんな男は靴も脱がずにズカズカと部屋に上がって来た。丹下は素早くパソコンを強制終了させた。

「おいっどう言うつもりだ」

「おまえの事は知らん、だが女がどこに行ったか教えないなら痛い目に会う事になる、それだけの事だ」

「勘弁してもらいてぇなぁ、女出入りはつつましやかにするように心がけてるもん・・・」

 言葉の途中で男は丹下の襟首をつかむとギリギリと締め上げてきた。丹下の足が宙に浮いた。男の表情は茶碗でも持ち上げたように無表情だ。

「てめっ改造人間か・・・」 

「改造人間では無い」

「冗談のわからねぇ奴は嫌いだよまったく・・・」

「簡単な事だ、女がどこに行ったかそれを言えばそれでこの茶番は終わりにしてやる」

「シラネェよ!!」

 丹下を捕まえた腕の反対の左手で男は一発目の拳を腹に突きこんだ。ごぼっつと低い音がして猛烈な吐き気がわいてきた。

「ほっ本当に・・・シラネェンだよ」

 丹下が蹴りを入れようとした瞬間、男が骨盤のあたりを人差し指と中指を突き出した握りで突いた。その一点から体全体がバラバラになるような衝撃が全身に走って足が言う事を聞かなくなってしまった。丹下が叫ぶその前に機械のように動くその手が丹下の口を恐ろしい怪力で閉じてしまった。

「・・・この調子じゃ言った途端にお前、俺を殺す気だな」

「言えば生かしてやる、そこそこ鍛えた体であることは解るが、お前は俺には、どうあがいても勝てん」

「全くだ、俺は人殺しの修行したわけじゃぁないからな」

「無駄な事はしゃべるな、お前の言うとおり、殺す方法なら色々心えている」

「解った!!解った降参するから放せ!!」

「そのまま言え」

「このままじゃあんまりだ、生かして貰える・・・保障ぐらいくれや・・・」

「そのまま言え」

「・・・小手指の駅だよ・・・20分ほど前だ」

「その先は」

「知るか!!」

 男は、その言葉を聞くと丹下の腰と、腹部に続けて鈍いが芯まで効く拳を肝臓の辺りを狙って、つき込んだ。もう言葉も出ない。

「生かしておいてやる、まぁその程度だろう。・・・どこまで知ってるかは知らんが余計な事はするな、今度は本当に殺しに来なきゃいけなくなる」

 男は乱暴にガラスに丹下を叩きつけるように開放した。うずくまって胃の中の物を全部吐き出している丹下を何の感情も無い目で一瞥した後、男は部屋の中をぐるりと見回し、パソコンをゆっくりと切り離し抱えると、素早く出て行った。

 まるっきり体が動かない、恐怖から体は本能的にガタガタと震えた、後動くのは内臓からくる強烈な痛みを伴う嘔吐の不随意的な痙攣だけだ、手足は言う事をまるできかなかった。

 まいった、あの女が言ってた事の一つは証明された。そうなると、余計な感情がわいてくる。どうにもしょうが無い。でまかせ言ったのだってその為だ。
 小手指まで行くのにあいつがかかる時間は、せいぜい十分、車か何かに乗っているならもっと早かろう。それまでに逃げ出さねばならない。胃の中の物を本当に全部吐き出して胃液も底がついた頃ようやく手に力が入るようになった。叫びながら足を叩いて感覚を取り戻し、必死に立ち上がると丹下は壁につかまりながらずるずると部屋を出ると、今朝、借金の形に取り上げたボロ車に向かった。

 何だか解らんが、どうやら今度は本当に命がけだ。



2月5日(月)01:14 | トラックバック(0) | コメント(1) | 丹下幸平 千石の壷 | 管理

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コメント

神待ち

写真の車は70年代や80年代に登場した車だと考えられます。
いまは、車の前にミラーは付いていないけど昔の車は全て前に付けるのが当たり前だったらしいよ。
車が故障するまで乗り続けた方がいいみたいだよ。


 by アダムちゃん | Mail | HP | 3月1日(木)18:13


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