丹下幸平@窃盗犯108号
 
みなーみBlog
 



お題でワンシーン
~説明~
みなーみがトレーニングの為、短編を毎日書きます、多分。アクセス稼ぎとも言いますが(汗。

暑い Ⅲ

木造の信じられないぐらい、ボロイ大学寮、大学のまん前にある
それを、学生達は揶揄して「鳥小屋第二金剛寮」と呼んでいた。

俺の部屋には、扇風機しかない。

冬の隙間風が、今ありゃぁいいのによー。

貧乏学生大集合のこの建物だったが、不断のバイトと代返で稼いだ金で
なんとか、クーラーを購入した奴が何人かいた。
三部屋隣の後輩もそうだ、行って見るか・・・てなわけで行ってみた。

予想通り、すでに部屋の前には何人かのスリッパが並んでいた。
それにしたって、今日は多い。6畳の部屋に7足もありやがる、部屋の中から
マージャンパイをジャラジャラ言わせる音が聞こえてきた。

ノックもせずにドアを開ける、外気よりは、さわやかな風がタバコの煙と共に
流れて来た、いやぁこりゃいいや。

「よーH、俺も仲間に入れてくれ」

Hは、俺と同期のYの後ろで小さくなって座っている

「モー限界っす勘弁して下さい」

「うるせー、お前がそっちの隅にいきゃ良いだろ、ほら開けろ、ホラ!」

「おーM、やるか?そろそろAが抜けるんだ」

「また、弁当、賭けてんのか」

Hの人権など、無視、今日は他のクーラー軍団は、ほとんどいないし、そういう奴の
部屋の鍵は、大概、厳重で、勝手に入りたくても入れないから仕方ない。
後一年、がんばりゃコイツにだって後輩が出来る、だから遠慮なんて
しない、もっとも、クーラーを買うような人間がこの鳥小屋に二年残ったって話は聞かないが

部屋の隅で小さくなりながら、かわいそうなHは猫を撫でていた。

Aがビデオ屋にアルバイトに行って、ハンチャンが終わった頃には俺の
尻にも根がはっていた、タバコの煙が粋な意味では全く無いレベルで眼にしみるが
サウナ状態の俺の部屋にくらべりゃ、よっぽどマシだ

そうおもっていたら、イキナリ停電、オイオイまたかよ・・・

暗い中「またあいつか・・・」とみんながヒソヒソ言ってると、いつもの火の玉がドロドロ出てきた
うちの寮の一番古い先輩だ、青い顔をして先輩が喋りだした。

「こんばんわー」

「先輩なんすか、今日は、勘弁して下さいよ」

「いやぁ、何だか楽しそうだったものでぇ」

気温が、ドンドン上がってくる。この先輩は、10年くらい前、うちの寮で首吊っちゃったんだが
原因が、女にフラレタだけらしく、その上しょっちゅう出てくれるので誰も怖がらなかった。

慣れたもんで、部屋の主が蝋燭を立てる、この人が出てくると電気がストップするので困る
また、ひとしきり話を聞いてやらないといけない、みんなうんざりしていた。

「で、今夜は、どの失恋の話です?」

「いやぁ、今日はお伝えしたい事があって来たのです~」

「はぁ?」

「もうすぐ、この部屋に異変がおこりますぅ」

「はぁっぁああぁ?」

後輩が撫でていた猫が「にゃぁ」と、めんどくさそうに一声鳴くと、先輩はドロドロ
音を立てて消えて行った。


みんな、ほっとして、電力の回復をまった・・・いつもだったら、五分もすりゃぁ、回復するんだが・・・

何かがぴょーんと飛んだ


「ののっ蚤だ!」


だれかが!大声で言った!
「ひぃ!」っと悲鳴を上げて猫を放すH、電気が回復した後、我々がパニックに陥ったのは言うまでも無い
マイクロ吸血鬼が、ぴょんぴょん飛ぶ、うわ!やられた!脇が、脇が野戦病院!うががが!

先輩が電気止めたのをキッカケに活動始めやがった!ちきしょー!今度、祈祷師呼んでやる!

混乱してモタモタしてる間に
蚤空母(猫)なんか飼ってるくせに潔癖症のHが、錯乱して買いだめしてるバルサンに火をつけた。

あぁまぁ確かにクーラー効かせる為に、この部屋、めばりしてるしねぇ・・・ってやめろ!バカ!



蚤虱 こゑたてて鳴く 虫ならば 我が懐は むさしののはら(一茶)


お後がよろしいようで・・・・次も「暑い」で行きます。

ちょっと笑った方はランキングへ





6月17日(金)09:23 | トラックバック(0) | コメント(0) | お題でワンシーン | 管理

暑い Ⅱ

「バカ野朗!てめぇ何やってんだ!しっかりケツを右に振れ!」

「ハイ!」

公団住宅の狭い階段の踊り場で、馬鹿デカイ箪笥を振り回しながら茶髪のチンピラが
俺に向って叫んでいた、箪笥のケツを俺はいつものように必死に押した。

大学五年生になって、親からの生活費はストップ、まぁ出なきゃいけない講義は少ないし
何だかんだいっても寮の家賃は払ってくれてる。
つつましく生活すりゃぁ、週4のこのアルバイトでも十分喰っていける。
てなわけで、前から気になってた、とあるガレージの張り紙の
「日給8千円、週2回~5回、運送助手」って奴をやって見ることにした。

張り紙に書いてあった、電話番号に電話して、俺の住んでる寮の最寄り駅から三つ行った所にある
事務所に行くと、いきなり採用。次の日、朝8時、張り紙の貼ってあったガレージに行くと。
一つ年下の安物のサングラスをかけた、チンピラが俺を待っていた。

「おはようございます、よろしく」

「あぁ、まぁ乗れや・・・」

仕事は、量販家具屋の配送の下請けだ、そこそこの価格の箪笥やらテーブルやらを体力を
駆使して、お客の部屋に放り込む。

まぁガテン系の仕事である、それと何より俺が組まされたこのチンピラがキッツイ男で
粘り強く付き合えば、それほど悪い奴でも無いのだが、初めたばかりの学生にメチャメチャな言葉で
毒づく、マイルールの中で働く職人で、助手がシートベルトを締めただけで
「そんなんで仕事が出来るかバカ野朗!」と大声でわめく。
要は理不尽な、野朗なのだ。それほど後は引きずらない性格が良く見えるまでは時間が必要だ
と言うか今思えば、イワユル、ちょっとした「ストックホルムシンドローム」になっていたのかもしれない。

そんな奴なもんで、バイトが一ヶ月マトモに続かない。

しかし俺は、もう三ヶ月以上続けていた。
学生っつっても、俺の場合は、働かないと喰えないのである、仕送りしてもらってる奴とは
ちょっと事情が違うので我慢出来た、段々感覚が麻痺してきて。
少々の言葉では動じなくなり「これはこれで、悪か無いかな」なんて思ってた所で
「なんか良いバイト無いかなM?」大学八年生の先輩に聞かれて紹介したら、先輩は
週一だったが、一ヶ月で辞めた「いやぁやっぱりキツカッたすか先輩?」とその後聞いたら
ものすごく、うらめしそうな顔で黙って睨まれてしまった。俺には、そういうことはしなかったが
もしかしたら、殴られたりしたのかもしれない。

どうやら、学生アルバイトとしては、最悪の部類に入るらしい。



6月13日(月)10:09 | トラックバック(0) | コメント(0) | お題でワンシーン | 管理

暑い Ⅰ

いらっしゃいませ~いらっしゃいませ~本日もパーラーフリッツへの、多数さま、大勢さまのご来店
誠に、あぁまぁことに、ありがとぉぅございます

さぁ本日もトップ№1番台を筆頭に2番台、3番台、5番台、6番台!
ラッキーセブンを真ん中にー!ラスト№367番台にいたりますまで
さぁ全機全台、あぁ全機全台、釘を甘く、広く、大きく広げましての大解放!
全てが優秀機、優秀台となっておりますれば、

さぁどうぞ奥へ中へ、奥へ中へとお入りいただきまして
本日のお客様の優秀機、優秀台を、お決めいただきまして、どうぞ本日も、ごゆるりと、お楽しみ下さい!

さぁお客様、パチンコの必勝法、なんと、なんと申しましても粘りと頑張り、粘りと頑張りで御座います
さぁ本日も、日ごろ鍛えられたその指先その黄金の腕前をフルに発揮いただきまして

さぁ本日もぉご遠慮なくさぁジャンジャンバリバリ!
あぁジャンジャンバリバリと、お出し下さいませ、おとりくださいませぇ~。



今日も、オッパジメの開店マイクが終わり、いつものとうりの単調な、ユーロビートの繰り返しが始まった。
昨日、新装開店が終了して今日から平常営業10時開店。

少々昨日は出すぎた、赤字になりすぎちゃぁいけないんだよ、パチンコ屋ってのはね。

そもそも、当たり前だが、パチンコってのはセコイギャンブルだ、みんなが持ち寄った金を
偶然が偏らせて嬉しい奴と寂しい奴に分ける・・・で実際の総和はマイナスでもプラスでもない。
店の大盤振る舞いってそんなもんだ。

だから店に利益が残らないぐらいで新装開店はちょうどいい、出ない開店なんてみられたモンじゃないけれど
赤字になりすぎるのは、それはそれで不味い、だから「大きく甘く」なんて今日は大嘘

それでも客はやって来る、朝からガキ連れてくるどっかの主婦、なんの仕事をしてるか解らないオッサン
気のいいヤクザ、モンスターハウスの168番台にしか座らない親父、土地成金の百姓。
しかし今日は朝からまた、特に濃い連中が集まりやがった、嫌だなぁ・・・・

パーラーフリッツは、結構古いと言うか場末な匂いのプンとするパチンコ屋だ
建物なんて安普請で、本当そのまま「ハコ」。壁なんて薄くて、この前、ぶちぎれた「気のいいヤクザ」
が、どついたらエライ大きな穴が開いた。

そんな、いい加減な建物だから空調の風の流れなんて何にも考えて無い

「ちょっと、寒すぎるんだけど」

「ハイハイ、待っててくださいね」

あわてて、空調の一部を切る、そうすると今度はその反対側から「暑いぞバカ」ってな具合だ。
そんな具合で、今日もいつものように無駄な努力を重ねていたら、昼飯を喰った後あたりからおかしくなった。

空調が。

早番の責任者は俺だ、どうしよう。ショウガナイからドアを全部開けてみたけど何の効果も無い
前から何とかしてくれって言ってたのによう・・・シブチン店長め

お客も最初はブーブー言ってたが、諦めの放送を入れたら黙りやがった。
マトモな奴らは一部、帰ったが前述の連中は帰る気配も示さない、店長に電話をかけてみる。

「このままじゃ、お客さん全部、帰っちまいますよ」

「いや、お客ってのわなぁ、寒いより暑い方が帰らねぇもんだ」

よく解らねぇけど、まぁ仕方ねぇ、だから場末なんだよ、まぁとにかく業者に電話をかけた直後
バイトの宇宙人みたいな19の女の子が、事務所に駆け込んで来た。

「Mさん!はッハッハッハチ蜂!」

慌てて、店の中に戻ったら、ミニ戦闘機みたいな凶悪な奴が3匹、飛んでいた、忘れてた
この前から駐車場の近辺でチョクチョク見たんだ、こりゃぁいけねぇ!
あわててスズメバチ三機をそーーーっと外に追い出しドアを全部、閉めた。

タバコの煙がドンドン溜まってきやがる、どうしようも無い、酸素が少ねぇ・・・
バイトの女の子の制服が汗で、チョット透けるのは、おつなもんだが、業者はまだか!

客まで含んでヤケッパチの状態になってきた、南のガラス窓を覗いてみたらオテントウさんは
一番高いところに座っておられた。もうやけくそだ。マイクするぞこの野朗!

「235番台の、お客様!取りましたお見事、777、無制限ラッキースタート!」

なんでこんな状態でも、こいつら、帰らねぇんだちきしょー。
権利物コーナーの島から赤ランプ、行ってみたらウィッグの隙間から汗をしたたらせた、いつものオバハン。

「ねぇ、当たってんでしょう、何とかしてよ」

権利物ってのは、今は無い種類の台だが、要は一回、当たると後二回、高確率で当たる台である
しかし、一回、当たってドル箱一杯出て、例え16分の一の確率でも当たらない時はドル箱が
空になっても当たらないなんて事もある、しかも今日の釘はギチギチだ、回らない回らない
オバハンの箱はすっかり空になっていた、こういう時、うちの場合は店員が当たるまで回してやる。

不服そうに汗を拭くオバハンの前の台のガラスを空け、玉の付いたゲージ棒を、役物に突っ込んで
センサーに当ててやって回す、オバハンの安香水の匂い毒ガスのごとく・・・うーたまらん。

ちきしょう!あたらネェ!業者は、まだか!泣くぞしまいにゃぁ!
20分ぐらいが経った、オバハンは暑さに喘ぎながら、扇子をパタパタやっている。

あんたそんなにパチンコが好きなら、旦那と別れて、この台と結婚しろっつーんだ。
しかも、汗が出すぎたせいか、オバハンの匂いが安香水から体臭に変わっていた・・・泣けるぜ・・・
ようやく、高確率のリーチが来た時、業者がやって来た。
何とか二回目が当たって、ほっとした俺は、思わずマイクで言った。


「おめでとうございます、258番台の、お客様ぁ、ワッキースタートー」

お後がよろしいようで・・・・次も「暑い」で行きます。

ちょっと笑った方はランキングへ



6月11日(土)00:26 | トラックバック(0) | コメント(0) | お題でワンシーン | 管理


(2/2ページ)
最初 1 >2<