丹下幸平@窃盗犯108号
 
みなーみBlog
 



お題でワンシーン
~説明~
みなーみがトレーニングの為、短編を毎日書きます、多分。アクセス稼ぎとも言いますが(汗。

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12月23日(火)06:25 | トラックバック(41) | コメント(7) | お題でワンシーン | 管理

暑い Ⅶ

その日、四万十川沿いにある処刑場に無宿鉄蔵こと以蔵はいた。

南国土佐藩は雲一つ無い快晴であった

土佐勤皇党の仕業の全てを白状してから一週間。
拷問は無かった。最後に鉄棒で殴られて潰れた鼻がまだ痛む。

武市に送られた饅頭に以前、仲間が持っていた自決用のトリカブトの味がした時
拷問に耐えていた、何かがガラガラと音を立てて崩れ落ちた。
武市がハッキリと「死ね」と言って来たなら死んでやった。
だが、ここへ来て勤皇党党首は饅頭に毒を盛ったのである。

自分の立場は理解しているつもりだった。
以蔵は文字も余り知らないし武市を囲む頭の良い連中とは、根っこで、うちとけられない、はぐれ者。

ただの人殺しだ。少なくともそれを理解は、していたのだ。

馬鹿にされたとか信用が無いのだとか言う気分は驚くほど湧かず。ただ何か楽になった。
そうして拷問が突然、嫌になり、逃れたいと、ただ単純にそう思ったのだ。それで全てを白状した。

暗い牢屋から、引きずり出され籐丸籠で処刑場まで運ばれる最中、以蔵は無心に青い空を
見つめた。その表情は、この後、無宿鉄蔵として獄門に晒される人の顔では無い。

何かに気づいた若者の顔だ、南国の五月の太陽はそんな今から何かが始まる青年を容赦なく焼いた。
警吏のヒソヒソ話を横から聞く所によると少し前
武市が城内で藩主、容堂の目の前で殊更、派手に切腹したそうだ。
何も感じなかった、格好良く行くのはあの人の業だ。

他人事だったんじゃなぁ、ここに来て、そんな事に気づくたぁワシはアホじゃ。

以蔵の座ったムシロの前に罪人の斬られた首を受け止める穴が掘られている。
少し湿っているが白い故郷の土だった。芋ぐらいなら育てられるだろうか?父親と畑を耕した
少年時代を思い出しながら以蔵はそんな事を考えていた。

「鉄蔵、何か言い残す事はあるか?」

あれだけ、しゃべらせといて今更、鉄蔵たぁ中々いい。冗談としては上出来だ。
首切り役人に尋ねられて、穴を見つめて以蔵は考えた。必死に何か言おうと考えた。

「無いのか?」

「ちょっとちょっと待ってくれ」

気の利いた何かを、言いたかった。少ない聞きかじりの知識を精一杯、記憶の棚から引きずり出すが
素っ頓狂な関係の無い芭蕉の俳句ぐらいしか出てこない。第一自分の言葉に成らなかった。

「まだか?」

「後少しだけ・・・頼む」

「うむ」

先に死んで行ったあいつらなら粋な言葉をさらりと考えて言うだろう。
やっちまった事に、今更後悔する気は、見物人が思ってる程は、もっちゃぁいない。
涙がポロポロこぼれ出した、怖いんじゃない、ここで何かが言えない自分が情けないのだ。

顔を上げて、空を見上げた。青い、少し紫がかった故郷の空だ・・・蒼い。

「・・・・・・死にたくねぇ!」

大声で叫んだ。間違いなく何かに気づいた今ここに居る以蔵の言葉だった。
初めて自分の気持ちを晒して
本当に以蔵は何もかも脱ぎ捨てて、わんわん鼻水と涙を垂らしながら泣いた。


空を見つめながら。




首切り役人の白刃が一閃して、鼻水に、まみれた以蔵の首が穴に転がった。


慶応元年五月十日、最後のその日、以蔵はホンの僅かだが確かに生きた。




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6月25日(土)10:54 | トラックバック(0) | コメント(0) | お題でワンシーン | 管理

暑い Ⅵ

その日、以蔵は賀茂川の堤の中にある、ススキの生い茂る草叢の中にいた。

岡田以蔵、アバタ面の屈強な、この男の目的は、人斬りである。

昨晩、藩邸に呼び出された以蔵が土佐勤王党党首、武市の部屋に行くと、部屋の主は他人事のように
書き物をしながら、こんな事を言った。

「以蔵、京都見廻り役の山村を知っているな」

「はい」

「勤王党に興味があるらしい、何度か尋ねて来た熱心な奴だ」

「はい」

「理屈を述べても解らぬ性質の人間らしい、困ったものだ」

そう言って、懐から二両つかみ出すと、平伏する以蔵の前に無造作に放り投げる。

以蔵には、それで十分だった。

汗の滲む体中にに無数の薮蚊が食いついたが、気にもせず
道場から、帰宅する山村を以蔵は朝からじっと待っていた。
これで、人を斬るのは十人目だ、最初は武市に薦められた九州での剣術修行の時

無宿者と喧嘩になって思わず斬った。理由はただの串団子の取り合いである。

あの頃、一刀両断にした無宿物の白い肉を見て震え上がっていたのが
自分のように今は思えない、それもほんの少し前の話である。三日、飯が喉を通らなかった。

しかし今は、人殺しの前に腹ごしらえの握り飯を食う余裕がある。
以蔵は、竹皮に包まれた、雑穀の混じった握り飯の包みを開くと、堤の上を見据えながら貪った。
いきつけの島原の女郎に握らせた物だ、色黒の肌を白粉で塗りこめた百姓の娘が握る
ショッパイだけのヒエの混じった裸の握り飯が、以蔵の好物だった。

この男に、武市が祇園で喰うような京都の贅沢な食い物を素直に旨いと思える感覚があったなら
その運命は随分違う物になったに違いない。重要なのは案外そんな事だ。
敷居の高い、お高くとまった物が苦手だった。本人は「嫌いだ」と言っているが本当は違う。

勤王と言う、幻の旗印に対する片思い。理想の相手は、けして以蔵に握り飯を握っては、くれなかった。

三つある、握り飯を二つ喰い終わり。
頬に付いた飯粒を取っていると、のりの効いた裃を着た標的の山村が堤の上を歩いて来た。
予定通りだ、包みを投げ捨てると刀の鯉口を切り、素早く堤の上まで駆け上がる。

「何奴」

「天誅!」

半歩遅かった、山村は以蔵の突きを避わすと、以蔵の返しの一撃を抜いた刀で受け止める。
鍔迫り合いになってしまったが、こうなったら膂力に勝る以蔵に分がある。
とは言え、山村も一刀流のそれなりの使い手であった。お互いの太刀を刃こぼれさせながら。
必死の押し合いが続く。業をにやした以蔵が、山村が一瞬力を抜いた瞬間、足払いをかけた。
倒れた山村に全身の力を込めた一撃を振り下ろす。だが山村は素早くその一撃を倒れながらも受け止めた。
その瞬間。

刃こぼれした、以蔵の太刀が折れて宙を舞った。

「くそったれ!」

山村の太刀を蹴り飛ばすと、折れた刀を山村の腹に突き立てる。
血を吐きながら、それでも這って逃げようとする山村は賀茂川に向って堤を転がり落ちた

人間は、そう簡単には死なない。

顔に、ついた返り血を拭いながら、以蔵は這いつくばる山村を捕まえると、水辺まで引きずっていった。
首根っこを掴み自ら泥まみれになってその首を水につける。
必死に山村は、もがいたが致命的な傷を腹に受けている、動かなくなるまで、それ程時間は、かからなかった。

山村の躯を賀茂川に流し、顔を洗い岸に上がると。さっき投げた握り飯が転がっていた。
砂だらけになった、それを拾うと以蔵は、迷い無く喰った。


君が為 尽くす心は水の泡
消えにし 後は 澄み渡る空

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6月24日(金)12:37 | トラックバック(0) | コメント(0) | お題でワンシーン | 管理

暑い Ⅴ

「ガイブドア、ペット産業に参入を表明」

ガイブドア代表取締役、森江隆文社長は、昨日の所信表明にて、ペット産業への
積極的な参入の方針を明らかにした。
「ペット産業は現在、国内でも、少子化に伴い市場規模は拡大の傾向にあり
中国においても上海などに住む富裕層を中心に成長している。趣味の範疇に
ありながら、その購買層は非常に幅広く、ネットビジネスの商材としては、極めて魅力的な
物であると言える」森江社長は、そう述べた。ガイブドア社としては今後
独自ブランドの設立、同産業の大手各社との提携を進めていく。

(毎朝新聞) - 6月16日19時19分更新


昨日は飲みすぎた。

イタワンって、会社ご存知だろうか?ペットフードの製造販売の大手だ。
まぁ、僕が、いつもやってる、買収からすりゃ、金額的には屁みたいな会社だったが同族企業で
ボンクラのバカ息子を、取り込んでのワリとドロドロした仕手戦になってしまった。
まぁそれも昨日の株主総会で決着した。まぁドロドロはさておき
ペット産業も、うちとしちゃ抑えとかなきゃいけない。

子供が無くて金を余らせてる若夫婦とか、独り者のキャリアウーマン、核家族化で子供と離れて
暮らす老夫婦。君の周りにだって、そんな人が犬に向って、信じられないくらいアホな顔を
してシガミついてるのを観た事があるはずだ。昔のように犬を庭に縛り付けて、犬小屋で番犬として
飼ってる風景なんざ。ヘタすりゃ虐待だなんて言われかねない。

まぁもっとも、子をなし、家族を作るってのが、リアルで無くなり。遊戯に過ぎなくなった
結果トコトン子育てからリアルを削った社会が、この市場の拡大の結果につながってるって思えば。
全く寂しい話だがね。いいーお客さんだよ。

まぁそんなこんなで、忙しい僕だが、昨日は、そのボンクラ息子を交えての
祝勝会だったわけ。銀座で飲んで、三軒目の店で眠ってしまった。

我ながら油断した、気づいた時には、何と海の上だ。フラフラする頭を押えながら周りを見渡す。
なんだよコレ?小さい船だな26フィートくらいか?大体なんでこんな所にいるんだ僕は?
操縦席を見ると、ボンクラ息子が、舵を握って途方にくれた顔をしていた。

「どう言う事ですか?これは?」

「あぁ森江さん、申し訳ありません昨日の晩、出航して朝には、戻るはずだったんですが・・・
申し訳ない、エンジントラブルが起こりまして」

「僕、そんな事頼みましたっけ??」

イライラしながら尋ねると。ボンクラ息子が言うには寝込む直前、釣りの話になったらしい。
道楽息子のコイツ、船を持っていてあんまり面白そうに話すので「行きましょう!今すぐ!」と
僕が言ったそうだ。日ごろ心がけている「有言即実行」が仇になった。気分良く酔っ払っていた僕は
しきりに連呼していたそうだ今日はオフだったしね。それにしたってコイツ何考えてんだ?
様子を観てからどうするか考えていたけど、次の総会で解任だ、決定だよ。

まぁしかし、ここでワーワー騒いだ所でしょうがないので、釣りをしながら、おとなしく助けを待つ事にした。
会社じゃぁ大騒ぎだろう、すぐに来るさ。



6月20日(月)12:08 | トラックバック(0) | コメント(0) | お題でワンシーン | 管理

暑い Ⅳ

旧来の瓦一枚の重さは、平均約3キログラム。
この重さの理由と言うのが風に対して強くする為なのです、日本家屋が台風に対して強い
秘密は実は、この瓦の「重量」に秘密があると言えます。

しかし反面、固定の為の土まで含めますと、家屋に対する負担は相当な物です。
耐震性を考えた場合、最近の建築に比べ脆弱な素材を使っていた建築法改正前の80年代前半の住宅は
20年が過ぎ、老朽化し、非常に脆い状態である事が多い。

ようは、頭が重すぎるのです、かといって皆さん、なかなか、どうして家立て直せるかと言えば
おいそれと、そうは行きません。

そこで、わが社がご提案するのは、新建材「鬼瓦くん」

「鬼瓦くん」は従来の瓦の約3分の1の重量、お値段も、お求め安い二分の一。
また当社独自の接着剤と、ビス止めによる工法で「風に強く、地震にも強い」タフな住居に
あなたの大切なマイホームを生まれ変わらせてくれます。

ご予算は、建物の補強工事を含めても、立て直す場合の半分以下、カラーバリエーションも12種類

「鬼瓦くん」只今、施工費一割引のキャンペーン中です。



以上が、今、俺の背中のリュックとショルダーバッグに入っている商品に付けられた口上だ。
軽いのは、珍しくも無い。樹脂製品だから。別にどうってこたぁない、もっと軽い商品だってある。
キャンペーンの施工費一割引は、接着剤に程度の低い体に悪ーいのを使うって意味。

まぁいい、それを売るのが、俺の仕事だ、しかしこのカラーバリエーション12色を
全部持たせて営業させるってのは、頭がオカシイとしか言いようが無い。
うちの社長は、体育会系で、そういうのが好きらしいが、お客は、別にそんなこた望んじゃいない。
要は見習い営業に対するシゴキだ、大阪の郊外の住宅地に、何人かマイクロバスで連れて来られて
「鬼瓦君」12枚とパンフレット100部、ペットボトルのお茶を渡されて放り出されたのが
今日の朝10時、最低30件回って、訪問した家から会社に報告しなきゃ帰らせてくれない。
体育会系なんてもんじゃない、こりゃ軍隊の仕打ちだよ。

毎年の恒例行事らしい、ここで日射病になって脱落するのが、半分もいる。

一時間毎に義務化された、定時連絡の三回目を、さっき済ませた。
何とかカントカ、7件回ったが、正直先が思いやられる。

適当にサボリタイ所なんだが、この辺りは住宅ばかりで、コンビニは、おろか喫茶店ですら無い。
渡された、お茶は、とっくに汗になって流れてしまった。

俺は、元々文化系の人間だ、見かけはガッチリしているけれど、こういうのはスマートに行きたいんだよ。
ちきしょー、でも資本主義の末端には、思った以上に理屈なんて許されねぇ・・・働くってのは、つれぇなぁ。

逃げ水が、漂うアスファルトの風景、ここは、きっと日本じゃなくて砂漠なんだ。

そんな、泣き言が、頭の中でグルグル回りだした頃、目の前の階段の上に清々しい白のワンピースを着た
日傘を指した女が見えた。へとへとになってる時の体ってのは虫みたいなもんだ。
俺は訳も無く、その女に向って歩き始めた。

階段の頂上に、たどり付くと、60代の男が女の日傘の下、歩道の縁石の上に座って
休んでいた、顔色が悪い。

「どうされました?」

「教祖さまが、先ほどから、お腹が痛いと申されまして・・・」

オイオイ、教祖って、どういう意味だよ。普通だったら御免こうむる所だが。
答えた女の適度な香水の品のいい香りが、疲れた俺の足を止めてしまった。

「申し訳ありませぬ・・・」

「いやぁ、袖すりあうも何とやらって言いますからね」

女と違って、加齢臭をプンプンさせるインチキ教祖を、俺は背負って歩いていた。
本当に俺はバカだ、文化系なりに体力はある方だが、女の魅力ってのは偉大で、男はチンケな生き物
だってのを、汗をドロドロかきながら、俺は実感した。

三軒の家を回ったが、この二人すでに、この住宅街では有名らしく、どこも相手にしてくれない。
不味いな、俺まで仲間と思われそうだ。歩く最中、女と教祖にインチキ宗教の話を延々とされた。
キリスト教系の新興宗教でまだ法人資格も持って無いようだが、疲れて無くてもどうでも良いと思える
電波系の宗教だった。

「よって、イエス・キリストは日本人であり、日本に流れ着いたマグダラのマリアが
教祖様のご先祖である事が証明出来るのです」

力強く、あんたみたいな美人が、そんな事言うな、世の中が終わりそうな気分になってくる。
そう思いながらも、俺は何とかこの苦行に耐え、笑顔で対応していた。

案外、俺、営業向きなのかもしれないな・・・
それにしたって、限界だ、さっきお礼に飲まされた、魔法瓶に入った臭くてクソ不味い茶色い水は
二度と飲みたくない、そんな時、林の、そばに自動販売機が設置されているのが見えた。
木陰もある「あそこで休みましょう」この辺で俺もオサラバだ、やってられねぇからな。

自動販売機に、120円を入れて、炭酸飲料のボタンを押す。
二人はしきりに例の水を薦めたが、モチロン断わった、あんなもん配ってる間は駄目だよインチキ宗教め
何となく哀れな感じもしたが、同情出来る立場じゃない。おれは炭酸飲料を一気にあおった。

「すいません、ティッシュを、お持ちですか・・・」

まぁな、教祖だって人間だって事か、申し訳なさそうな顔の女の眼を見ないように俺は、街でもらった
サラ金の宣伝入りのポケットティッシュを渡してやった。

二人が、林に入りしばらくして、ブリブリと下品な音と共に、嗅いだ覚えのある臭いが漂って来て
俺は飲まされた「御聖水」と炭酸飲料を全部、目の前に吐き出した。




僧正の野糞遊ばす日傘哉(一茶)


お後がよろしいようで・・・・次も「暑い」で行きます。


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6月18日(土)16:37 | トラックバック(0) | コメント(0) | お題でワンシーン | 管理


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