丹下幸平 百万円のツボ ~説明~ |
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| 丹下幸平
32歳 高利貸しを表の稼業にしているが
正体はマヌケでケチな大泥棒
の日常
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百万円のツボ 其の1 |
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| 警視庁また大失態、広域窃盗犯108号とり逃がす
昨日12日未明、中央区宝石店「銀座赤穂」の警備会社より侵入者ありとの通報を受け現場に急行した築地署の警官数名は、黒いタイツで身を固めた窃盗犯らしき容疑者を発見、ビル屋上まで追い詰めるに至るが、容疑者はビルから隣のビルへ飛び移る等のアクションスター紛いの行動で逃走、包囲網を突破。入船橋付近で、目撃されたのを最後に姿を消した。被害額は、貴金属を含む現金で総額は1000万円程度とみられる
警察では、この容疑者を、その手口と逃走パターンから窃盗犯108号と見ているが、現場を取り押さえる寸前で、とり逃がしたのは、これで三度目となり、各方面からは、警察の一連の失態に批難の声が出ている。
(共同通信) - 4月13日10時21分更新
所沢のボロアパートの一階のとある部屋の玄関口で男が座り込んでいた
「だからなぁ、もう利息ぐらい払って貰わねぇとコッチが困るんだ、なぁ」
手にしたポケットティッシュで鼻をかむ男、男の言葉を生活に疲れた薄幸そうな女が正座で聞いていた
「夫があんな状態で・・・・」
女が指差した先の部屋の奥には咳き込む旦那らしい男が寝ている、玄関から見えるリビングには電子部品の内職の材料が見えた。
「解ってるよそんな事、でもこっちにゃこっちで都合ってもんがある! あんたの都合で金貸しが日干しになってちゃ訳がわからん!・・・・・いや本当何とかして下さいよ!」
少し声を荒げてそう言うが鼻水がずるーーっと垂れてきて様にならない
「花粉症ですか?」
「いやチョッと風邪ひいてな・・・・・・・・・・・ゴミ箱ある、あぁゴメン
いや、そんなこたぁどーでもいいんだ!どうすんだ奥さん!利息だけでも払えるのか?オウ!」
気を取り直して凄みなおした後、 バツが悪くなり丸めたポケットティッシュを懐に突っ込むと中学生の子供が帰ってきた。
「母さん!」 「一郎!」
男を突き飛ばして、息子を抱きしめ泣き出す母
圧倒されぎょっとする借金取り、間髪いれずに親子が泣き出した
「ごめんね、ごめんね一郎、母さんと父さんが不甲斐ないばっかりに」 「何を言うんだ母さん!母さんに罪なんてあるもんか!」
泣き崩れる二人、近所の人間が顔を出し始めた
「泣き落としかぁ、冗談じゃねーぞ、静かにしやがれ!」
「いいんだよ、母さん、おじさん!僕がタコ部屋でも何でも行くよ!父さん母さんを虐めないで!」
「何いってんだ、話ごまかすんじゃねー!ガキ!」
「ごめんよ、ごめんよ、一郎」
「僻地の工事現場でも、海上土砂採取でもなんでもやるよ!だからオジサン!」
「だからなぁ冗談じゃねーっつてんだ・・・バカ!」
「あぁそんな事を言うなら母さんが、吉原でもどこでも行ってどうにかしてあげる、一郎そんな事言わないでお願い」
「なら、俺が肝臓と腎臓を売ってやる・・・・」
「あなた、何言うの!」
「母さんに違法風俗に行かせるぐらいなら、僕がタコ部屋に行くよう!」
「アッアホかお前ら!」
「本気です!」
鼻をグジュグジュ言わせてちょっと涙ぐんできた、どうやら風邪とは違う理由で泣いているようだ
「僕ね僕ね、お父さんとお母さんさえいてくれれば、それでいいんだよ一生懸命、新聞もくばるよ そいてねそしてね・・・足りないだろうから僕、海の上の土砂採取場へでもどこへでも行く!」
「わけわかんねぇ!事言ってケムにまくんじゃねぇ!」
「一郎あぁなんていい子なんだろう、かぁさんを許しておくれぇヨヨヨヨ・・・・そんな事をさせるくらいなら私が風俗産業に!」
「何言ってんだ、元々俺が一番悪いんだゲホゲホうぅ・・・俺の内臓を買ってくれ丹下さんゲホゲホ」
「あなた、大声だしちゃ駄目よ!安心して私みたいなのでも需要はあるのよ!」
「俺さえ早くしんでりゃぁくそう・・・・保険にさえ入っていたら・・・・」
「何いってんだい!僕は父さんも母さんも大好きさぁ、うわーーーーーん。 じゃぁ間とって僕がフィリピンに人身売買で売られればいいんだようーーーー!」
大騒ぎになった上周りから、もらい泣きの声がしてきた、っていうか借金取りが鼻水まみれになっていた
しばらくして借金取りは夕暮れ時の喫茶店にいた、くしゃみを、しながら ノートパソコンの帳簿を見ている、どうにも赤字だ 借金取りの名前は丹下幸平、個人で高利貸しをしている32歳だ
「ちきしょう、なんで俺が金を貸した奴はドイツもコイツも寝たきりになっちまうんだろう・・・」
「そりゃね、あんたが泣き落としに弱いって有名だからよ」
丹下が頭を抱えているところに同い年ぐらいの水商売らしい女が 何食わぬ顔でブルーマウンテンを注文して丹下の前に座った
「出勤前だし、おごってもらうから、ありがとーコウヘイちゃん」
「なんだよ、それ冗談じゃねーぞ!」
「本当よ、あの界隈じゃ有名なんだから”話の解る街金”ってね」
「くそう、これは仕切りなおさねば俺は鬼になってやる・・・くそみてろ・・・あっおごらねーぞ言っとくけど」
「元々向いてないのよ、商売がさぁ、鬼になりきれなるわけないもんコウヘイが・・・嫌いじゃないけどねそういうの」
「由香と違って俺はそんな簡単にアキラメン!継続こそ力なりって奴だ! 大体そういうお前は、その年で、未だノービジョンじゃねーかだから結婚も失敗するんだ!」
鼻水が止まらず、どうにも様にならず、イヤミにならず
「それより、あんた風邪?ばっちいわねぇ、うつさないでよ」
「昨日は色々大変だったもんでな・・・おごらねーぞ言っとくけど」
注文したコーヒーを一口すする女、由香というらしい
「何、隅田川で一晩中、遠泳でもしてた?」
余裕シャクシャクで丹下を面白そうに見ている、しばらくの沈黙の後
「ねぇ本当、街金なんか止めて、ドロボーに専念したら」
「大きな声で言うなバカ!」
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4月20日(水)00:02 | トラックバック(0) | コメント(0) | 丹下幸平 百万円のツボ | 管理
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