丹下幸平@窃盗犯108号
 
みなーみBlog
 



2005年7月7日を表示

坪内昭三1947 其の19

小火騒ぎが収まり、橋本は改めて縄で縛られて
人のいなくなった賭場に転がされていた。
片目が額に青筋を立て引きつった笑顔をつくりながら、
橋本の側に屈むと手に持ったドスの鞘で
橋本の腫れ上がった頬をピシャピシャと叩いた。

「まったく嫌な野朗だねぇ、おとなしくしてりゃぁ明後日の朝にゃ
無罪放免って言ってやってたのによう」

橋本は、改めて殴られたのか口答えも出来ない状態だった。
ウンウンうなるのが精一杯、変形した顔面から
血がしたたり落ちて薄汚い賭場の畳を染めていた

「まぁな、死んでもらうのが一番簡単なんだがね、お前、俺の左目潰してくれたからねぇ
まずは、お礼をしなきゃいけねぇ・・・・」

黒い眼帯をつけた左目を指差すと橋本の髪を掴み上げた
息も絶え絶えの橋本が、振り払おうとするが見張りをしていたウドの大木野朗が橋本を押える。
片目はドスを鞘から抜いた、橋本の腫れ上がった左目に切っ先をつきつける

「やっやっやべど・・・・」

「そうは、行かねぇ。悪いのは、おめえだ」

腫れ上がった瞼の上からドスを突き立てた。
声にならない叫びを腹の底から絞り上げながら橋本は身をよじる。

「さて・・・これでまずは、おあいこだ・・・・次は、どうしてやろうかな・・・」

片目は懐からタバコを取り出すと、舎弟に火をつけさせて、楽しそうに次のリンチの方法を考え始めた。



カフェのママが高倉組のビルの前、クロガネ4起を乗り付けると。
花束持って待っていた組長の高倉が、それを迎えた。

「お嬢さん、お待ちいたしておりやした」

「挨拶は、いいよ、それより出入りだ、覚悟は決まってるだろうね?」

「えぇ?出入り?」

「あんた、それぐらい察しを効かせな!何、呑気に花なんぞ持ってんだよ、
まったく・・・支度違いだよさっさと道具もって横に乗りな!」

「いや、お嬢さん!やめときなせぇ!せっかく先代が、お亡くなりになって堅気になったんだ
つけの取立てだぁなんだで、殴りこみやらかしちゃぁ草葉の陰で親父さんが泣きますぜ!
そんな事ならあっしらが、うまく平和的に・・・いやまぁヤクザ的にまぁどうにかいたしますから」

「ほんっとにあんたはバカダネェ、呆れて物もいえないよ!なんだい!平和的にヤクザ的にってなぁ
腑抜けのどっかの国の憲法じゃ無いんだよ!あたしの大事な妹分とその間夫が柄さらわれちまったんだ!」

「なんですって!!!そいつぁいけねえ!!!」

高倉は、顔色を変え、持っていた花をもったっままモンドリうつように
踵を返し事務所に駆け込むと。しばらくして旧軍の鉄兜を被って襷がけにドスを持ち
持てる限りのピストルを襷と帯に突っ込んで出てきた。

「あんたねぇ、それ売りに行くのかい?二人きりしかいないんだ、どうするんだよ、まったく」

真顔で懐から一丁取り出し、ママに渡すと続けて高倉は言った

「お嬢さん、こいつぁね、こういうもんだ。ドスなんざ、二三人怪我させたら
案外使えなくなるもんです、鉄砲だって弾込める余裕なんてねぇもんだ。
奴ら、高田馬場あたりに最近、賭場開きやがったんだがその辺でトグロまいてんでしょう
こう見えてもね、無茶な殴りこみなら、あっしの専売特許、まかせておくんなせい」



7月7日(木)01:42 | トラックバック(0) | コメント(0) | 坪内昭三1947 | 管理


(1/1ページ)